第173回 【巨人】2022年新外国人マット・アンドリース投手の投球分析
2021年12月17日、巨人がマリナーズのマット・アンドリース投手(32)を獲得したと発表がありました。1年契約の推定年俸200万ドル(約2億2700万円)で背番号は「29」。
そのため今回は「【巨人】2022年新外国人マット・アンドリース投手の投球分析」を紹介します。
データはBaseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
基本情報
バリバリのメジャーリーガー
所属球団 | タンパベイ・レイズ (2015 – 2018) アリゾナ・ダイヤモンドバックス (2018 – 2019) ロサンゼルス・エンゼルス (2020) ボストン・レッドソックス (2021) シアトル・マリナーズ (2021) |
ポジション | リリーフ、先発 |
投打 | 右投右打 |
生年月日 | 1989年8月28日(32歳) |
身長 | 190.5 cm |
体重 | 97.5 kg |
高い制球力
上はメジャー、下は3Aの年度別の成績です。
2017年までは主に先発でしたが、2018年にリリーフに転向しました。
メジャー通算で防御率4.63、奪三振率8.4、与四死球率2.9と、三振が獲れる制球力が高い投手です。
2021年の通年成績は防御率5.21、被打率.322と打たれていますが、レッドソックスからマリナーズに移籍後は防御率2.45、被打率.244、WHIP1.09と復調しています。
持ち球は5球種
上図は年別投球割合で、色が球種を表しています。
持ち球はストレート、ツーシーム、カットボール、チェンジアップ、カーブの5球種です。
2019年以前はスライダーも投げていましたが、ほぼカットボールに似たボールなので実質5球種と言えそうです。
投球割合に左右差なし
上図は右打者、左打者別の投球割合で、色が球種を表しています。
ややカットボールが右打者に多いくらいで、投球割合はほぼ左右差がありません。
MLB投手はチェンジアップを左打者に多く投げる傾向ですが、マット・アンドリース投手は右打者にも積極的に投げています。これは後述するように、チェンジアップがシュート回転せずにジャイロ回転していて、右打者にも有効なためと考えられます。
日本では
カットボールとカーブは初球、チェンジアップは決め球
上図は右打者、左打者別のカウント別投球割合です。左が数値の表、右が円グラフ。
カットボールとカーブは初球、チェンジアップは決め球に投球割合が多いです。
カーブで初球の打ち気を外せているためか、初球の被打率はそこまで高くはありません。
リリースは体から遠く、球持ちはやや悪い
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均です。
リリースポイントはMLB平均より約10cm遠く、球持ちは約10cm悪いです。
そこまでグラウンドボーラーではない
左は全体とメジャー平均、右は各球種別の被打球種類です。
本人は「自分はグラウンドボーラー」と過去に言っていたり、スポーツ新聞の各紙も「ゴロアウトを量産」と書かれていますが、ゴロ率は47%とやや高い程度です。
ただ球種別に見ると、全変化球のゴロ率が52%以上なので、先発になって変化球の割合が増えると、かなりのグラウンドボーラーになるかもしれません。
ツーシームとカットボールを投げることで、対右打者の成績が向上
2019年までは対右打者の方が成績が悪かったです。
ツーシームとカットボールを投げるようになり、 2020年から逆に対右打者の方が成績が良くなりました。
対ピンチはやや弱い
得点圏の被打率.281、被OPS.794と、それ以外の時に比べてやや悪いです。ただこれくらいの差は一般的です。
全球種がそれなりに使える
上はOPSのグラフ、下は球種別の成績です。
チェンジアップ、カーブは左右ともにOPS.750以下とそれなりに使えます。
ストレートはOPS.800以上と高い値ですが、対右打者にはOPS.750以下とそれなりに使える球種です。
ツーシームとカットボールはサンプルが少ないです。
平均球速148.0km/h、2332回転
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートの平均球速は148.0km/hとMLB平均よりは遅いですが、NPB平均145.5km/hよりは速いです。回転数は2332回転と50回転多いです。
ツーシームはMLB平均より5km/h遅いです。
カットボールもMLB平均より5km/h遅く、 MLB平均のスライダーくらいの球速帯です。
チェンジアップはMLB平均くらいですが、回転数がMLB平均より400回転も多いです。
カーブはMLB平均くらいですが、回転数がMLB平均より150回転多いです。
先発とリリーフで球速差が無い
上図は年度別の平均球速と回転数の推移です。
2018年にリリーフに転向しましたが、平均球速と回転数にあまり変化が見られません。このことから、先発とリリーフで球速差が無い投手と言えます。
また7年間、平均球速148km/h、2350回転前後で安定しています。
ノビのあるストレート、ジャイロチェンジ
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、△はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
変化量
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートはMLB平均より回転軸は同じくらいで、ホップ成分が3cm多いノビがあるストレートです。
ツーシームは回転軸はMLB平均くらいです。変化量は2020年はMLB平均くらいでしたが、2021年はシュート成分が多く、ホップ成分が少なく変化量が大きくなって成績も向上しました。
カットボールは2シームジャイロ回転で、縦に落ちるカットボールです。
チェンジアップは回転軸はシュート寄りですが、シュート回転ではなく、4シームジャイロ回転です。そのため、ストレートに比べてスライド方向に落差が大きいボールです。
カーブは回転軸がトップスピン寄りで、ドロップ成分が多く、横変化が少ない縦に落ちるカーブです。
ストレートは真ん中に集まっている
上図は球種別のヒートマップで、色が濃い所が投球数が多いことを表しています。
ストレート、ツーシームは真ん中に集まっています。カットボール、チェンジアップ、カーブは低めのストライクゾーンギリギリが多く、変化球の制球が良いです。
対右打者には低め×、対左打者には高め×
対右打者には低めの被打率が悪いですが、アウトローのボールゾーンはかなり成績が良いです。
対左打者には高めの被打率が悪く、低めはかなり優秀な成績です。
ツーシーム以外は軌道が近い
ツーシーム以外はピッチトンネルまでの軌道が似ています。
まとめ
①2018年にリリーフに転向
②奪三振率はやや高く、四死球が少ない
③持ち球は5球種
④カットボールとカーブは初球、チェンジアップは決め球
⑤リリースは体から遠く、球持ちはやや悪い
⑥2020年から対右打者の成績が向上
⑦平均球速148.0km/h、2332回転
⑧先発とリリーフで球速差が無い
⑨ノビのあるストレート
⑩4シームジャイロ回転のチェンジアップ
⑪変化球の制球が良い
⑫対右打者には低め×、対左打者には高め×
今回は「【巨人】2022年新外国人マット・アンドリース投手の投球分析」を紹介しました。
2017年までは主に先発でしたが、2018年にリリーフに転向しました。メジャー通算で防御率4.63、奪三振率8.4、与四死球率2.9と、三振が獲れる制球力が高い投手です。
ストレートは平均球速は148.0km/h、回転数は2332回転とMLB平均より50回転多いノビのあるボールです。
ツーシームは変化量が多いと成績が良くなります。
カットボールはMLB平均より5km/h遅く、縦に落ちるカットボールでカウント取るのに使用しています。
チェンジアップは4シームジャイロ回転で、ストレートに比べてスライド方向に落差が大きいボールで最大の決め球です。
カーブは横変化が少ない縦に落ちるカーブで、初球に投げることが多いボールです。
先発とリリーフで球速差がほとんど無く、球種も豊富なので先発の方が適してそうな投手です。