第174回 【マーリンズ】イチロー投手の投球分析(2015年トラックマンデータ)
2021年12月18日、日米球界のレジェンドのイチロー投手(48)が、ほっともっと神戸で高校女子硬式野球選抜チームとのエキシビションマッチに登板。9回を147球、4安打、4四死球、17奪三振の無失点完封、最速は135km/hでした。
ストレート以外にスライダー、ツーシームの変化球も投じたとの報道もありましたが、トラックマン等では計測されていないので詳細なデータはありませんでした。
そこで今回は少し古いですが、マーリンズ時代の2015年10月4日にイチロー投手がMLBで投げた時のトラックマンデータを紹介したいと思います。
データはBaseball Savantを使用します。
2015年10月4日の投球内容
変化球を投げてからは抑えた
上図は2015年10月4日のイチロー投手の全投球内容です。
打者5人に対して、全18球を投じて2二塁打、1失点、無四球でした。
球種はストレート、フォーク、スライダーの3球種で、スライダーは回転数が2000回転以下は「抜けスラ」としました。
最初の3人には全てストレートだったので打たれましたが、途中から変化球を投げることで抑えることが出来ました。
リリースが低い
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均です。
MLB平均に比べて、リリースポイントが25cmも低く、球持ちは20cm短いです。また、全体的にリリースが非常に安定しています。
制球が非常に良い
上図は左右打者別のベース上での位置です。
二塁打を打たれた真ん中付近のストレートを除いて、ほとんどの球が枠の近くに投球されています。
特にスライダーの制球は素晴らしく、高めに抜けるボールはありませんでした。
左打者のインハイの1球、右打者のアウトローの2球は、トラックマンではストライクですが、判定はボールでした。審判の判定が難しいほど、良いコースに決まっていたと言えそうです。
平均球速140.6km/h、2181回転
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートは平均球速140.6km/h、2181回転と、MLB平均よりは10km/hほど遅いですが、回転数はMLB平均並みです。回転数がMLB平均並みというのは、野手ピッチャーとしては非常に珍しいことです。
スライダーに至ってはMLB平均よりも140回転多い2576回転で、「抜けスラ」は2000回転以下でした。
また、フォークも回転数が1349回転としっかり抑えられています。
ストレートとフォークはシュート回転、スライダーは変化量が大きい
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートは3球、ホップ成分が少ないボールがありましたが、残りのボールはMLB平均くらいのホップ成分でした。シュート成分は33cmとMLB平均18cmよりもかなり多いです。これはリリースの手首が寝ていたため、回転軸がシュート側に傾いていたためと考えられます。
フォークはホップ成分はMLB平均くらいで、シュート成分は47cmとMLB平均27cmよりもかなり多いです。ストレートとの落差は約25cmと大きいです。
スライダーはドロップ成分4cm、スライド成分24cmとMLB平均よりも変化しています。抜けスラの時は変化量が少ないですが、それでもホップ成分1cm、スライド成分20cmとMLB平均よりも変化しています。
ピッチトンネルまでの軌道が似ている
どの球種もピッチトンネルまでの軌道が似ています。
高校女子硬式野球選抜チームとのエキシビションマッチ
動画のように、今回のエキシビションだとフォームが縦振りになって、手首が立っているように見えます。そのためシュート成分が減って、さらにノビがある球になってそうです。
また動画の0:54からの投球は、報道にはありませんでしたがカットボールらしきボールも投げていました。
まとめ
①打者5人、全18球、2二塁打、1失点、無四球
②変化球を投げてからは抑えた
③ストレート、フォーク、スライダーの3球種
④リリースポイントが25cmも低い
⑤制球が非常に良い
⑥平均球速140.6km/h、2181回転
⑦ストレートはシュート成分33cm
⑧フォークはシュート成分47cm、落差は約25cm
⑨スライダーは2576回転、変化量が多い
今回は「【MLB】イチロー投手の投球分析(2015年トラックマンデータ)」を紹介しました。
投球内容としては打者5人に対して、全18球、2安打、1失点、無四球でした。
持ち球はストレート、フォーク、スライダーの3球種で、スライダーは回転数が2000回転以下は「抜けスラ」が3球ありました。
ストレートは平均球速140.6km/h、2181回転、シュート成分が33cmとシュートに近い球質のボールでした。
フォークは回転数が1349回転としっかり抑えられていて、ストレートの落差が約25cmと大きいです。ただ、残念ながら2球とも大きく外れてしまいました。
スライダーは2576回転とキレが良く、変化量も大きい上に制球が出来ていたので、一番の武器になりそうな球種です。
リリースが低く、回転数が多く、スライダーのキレが良く、制球が非常に良いので、打者にとっては打ちづらい投手だと思います。
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