第90回 【球種分析】ストレートに必要なのはシュートライズ?スライドライズ?(トラックマンデータで検証)
前々回 「ストレートはホップした方が良いのか?」
前回 「ストレートに必要なのはシュート?スライド?」
前々回はホップ成分、前回はシュート成分について検証して、「ストレートはホップした方が良い」「ストレートはシュートしない方が良い」という結果が得られました。
今回はホップ成分が多い球(ライズ)に限れば違う結果が得られるのではないかと思い、検証していきます。
使用したデータはBaseball Savantの2020年右投手のデータです。今回は左右差の影響が無いように右投手のみにしました。
ストレートは「シュートライズ」「スライドライズ」のどちらが良いのでしょうか?
検証方法
上図のように、ストレートのホップ成分が45cm以上のライズボールでシュート成分量別に4グループに分けました。今回はこの4グループについて検証します。
検証①「ライズの中ではシュートすると空振率、見逃率が低い」
上図はライズボールでのシュート成分別の空振率と見逃率です。シュート成分が増えると空振率が低下傾向です。見逃率に関してはシュートする方がやや上昇しています。
✔シュートライズの方が空振率が低い
✔シュートライズの方が見逃率が高い
検証②「ライズの中ではシュートすると長打が打たれやすい」
上図はライズボールでのシュート成分別のリスク管理です。シュート成分が増えると長打の割合が増加しています。
シュートライズの方が長打の割合が増える
検証③「ライズの中では平均くらいのボールが一番打たれやすい」
上図はライズボールでのシュート成分別の被打率です。シュート成分が増えると右打者の被打率が上昇しますが、逆に左打者の被打率は減少します。
平均(ライズのグループ)の被打率が高いという傾向は見られません。
✔平均の被打率が高いという傾向はない
✔シュートライズの方が左打者に有効
✔スライドライズの方が右打者に有効
検証④「ライズの中ではシュートすると回転数が多いが、球速が遅い」
上図はライズボールでのシュート成分別の球速と回転数です。シュートライズは4グループの中で一番回転数が多く、球速が速いです。
✔シュートライズが一番回転数が多く、球速が速い
検証⑤「ライズの中では球持ちが悪い投手の方がシュートする」
上図はライズボールでのシュート成分別のリリースポイント(三塁側目線)の図で、右側がホームベースになります。
シュート成分が増加すると、リリースポイントはエクステンションが短く(球持ちが悪く)なり、低くなっています。
✔シュートすると球持ちが悪い
検証⑥「ライズの中では横から投げるほど、ストレートはシュートする」
上図はライズボールでのシュート成分別のリリースポイント(捕手目線)の図です。
シュート成分が増加すると、リリースポイントは頭から遠くて低くなっています。
✔シュートすると頭から遠くて低くなる(サイドスローに近づく)
結論「右打者にはスライドライズ、左打者にはシュートライズする方が良い」
検証②「ライズの中ではシュートすると長打が打たれやすい」
検証⑤「ライズの中では球持ちが悪い投手の方がシュートする」
検証⑥「ライズの中では横から投げるほど、ストレートはシュートする」
検証①「ライズの中ではシュートすると空振率、見逃率が低い」
検証④「ライズの中ではシュートすると回転数が多いが、球速が遅い」
検証③「ライズの中では平均くらいのボールが一番打たれやすい」
今回、ホップ成分が45cm以上のライズボールでシュート成分別の検証を行いました。
基本的にはスライドライズの方が良いですが、左打者に関してはシュートライズする方が良いみたいです。