第237回 【大谷翔平】不調でも6回2安打の好投(2022年5月11日投球分析)
2022年5月11日、大谷翔平投手(27)が本拠地エンゼルスタジアムでのレイズ戦に「3番・投手兼DH」で投打同時出場。
6回を投げて92球、被安打2、四球2、奪三振5、1失点の投球内容でしたが、勝敗は付きませんでした。
20連戦ラストの試合だったこともあり、疲労の影響でストレートには本来の球威が無く、どの回も先頭には制球が不安定でした。それでも途中からカーブを軸に1失点に抑える投球でした。
今回はそんな「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年5月11日投球分析」を紹介します。
データはBaseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
1. 球種・投球割合
ストレートとカーブを多投
今回はストレート、フォーク、スライダー、カーブの4球種でした。
いつもよりストレート52%、カーブ13%と多投して、今回はスプリーム、スラッターとを投げませんでした。
※当ブログでは「カットボールをスラッター」と「第二のスプリットをスプリーム」と呼称しています。詳細は過去記事を参照して下さい。
左右ともにストレートの割合がやや増加
上は前回登板までの2022年平均、下は今回の左右投球割合です。
左右ともにストレートの割合がやや増加して、フォークが少なかったですが、ほとんどいつもの投球割合でした。
2. コース
抜け球が多い
左打者に対して非常に抜け球が多いです。このため球数が多くなり、苦しい投球になってしまいました。
ホームランを打たれたフォークはど真ん中でした。
3. 各成績
やはり左に打たれ気味
いつものように今回も左打者に15打数2安打と、左打者の方が打たれました。
ストライク率、空振り数が減少
前回キャリアハイの29個の空振りを奪いましたが、今回の空振り数は12個だけでした。特にストレートは10→2、フォークは5→1と激減しました。
またストライク率62%(前回82%)、ゾーン内率58%(前回69%)と減少しました。ただ前回が異常なだけで、先発として十分な数字です。
4. リリースポイント
リリース位置が体から遠くて低い
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。◇は2022年平均、△はMLB平均です。
リリースポイントが約7cmほど体から遠く、低いです。つまり、腕の振りが横振りになっています。ただし、カーブだけはリリースポイントが高いです。
また球離れがいつもより3~5cm早かったです。
「1球種、1球種、どういう投げ方が打者が嫌なのか、リリースポイントを変えたり」と試合後に本人がコメントしていたので、リリース位置は今後も変わりそうです。
5. 球速と回転数
平均球速154.3km/h、最高159.6km/h
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、◇は2022年平均、△はMLB平均を表しています。
ストレートの平均球速154.3km/h、最高は159.6km/h、回転数は2290回転でした。
本塁打を打たれたフォークは回転数が多く、ただの半速球でした。
カーブはカウントを取るスローカーブと、球速が速く回転数が多く決め球のパワーカーブの2種類を投げ分けていました。
平均球速は今季最低
今回の平均154.3km/hは今季最低でした。しかし、回転数は前回同様に多かったです。
最終回は平均147.7km/hまで低下
6回は平均球速が147.7km/hと低下しています。
これは6回にカウント3-0から置きに行った1球しか投球していないからですが、明らかに疲労の色が見えていました。
6. 回転軸と変化量
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、◇は2022年、点線はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
ストレートがホップ量が少ない
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、◇は2022年、△はMLB平均を表しています。
ストレートはホップ量が少ない球が多かったです。
スライダーは明らかに横変化量が2グループくらいに分かれており、状況に応じて横変化量を調整していたと考えられます。
カーブは今回も変化量が安定していました。
まとめ
①ストレート52%、カーブ13%と多投
②抜け球が多い
③左打者に15打数2安打
④ストライク率62%(前回82%)
⑤空振り数12個(前回29個)
⑥リリース位置が体から遠くて低い
⑦平均球速154.3km/h、最高159.6km/h
⑧カーブは2種類を投げ分け
⑨最終回は平均147.7km/hまで低下
⑩ストレートがホップ量が少ない
⑪スライダーは横変化量が2種類
今回は「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年5月11日投球分析」を紹介しました。
6回を投げて92球、被安打2、四球2、奪三振5、1失点の投球内容でしたが、勝敗は付きませんでした。
20連戦ラストの試合だったこともあり、疲労の影響でストレートには本来の球威が無く、抜け球が多くて制球も不安定でした。平均球速154.3km/hは今季最低の数字でした。
しかし、2種類のカーブを投げ分けたり、スライダーの横変化量を調整したりと、球威が無い中でも2安打に抑える適応能力の高さがありました。
あとは「ストレートのホップ量が少ない」「フォークの精度」あたりが課題ですが、次回登板では修正してくれることを期待したいです。