第87回 【球種分析】ストレートはホップした方が良いのか?(トラックマンデータで検証)
ホップ成分について色々な意見を聞くことがありますが、それぞれの意見は本当なのでしょうか?
ということで、今回は「ストレートのホップ成分」について検証します。
使用したデータはBaseball Savantの2020年右投手のトラックマンデータです。今回は左右差の影響が無いように右投手のみにしました。
検証方法
上図のように、ストレートをホップ成分量別に8グループに分けました。
ただし、「RyanThompson」「Darren」「AdamCimber」「TylerRogers」の4投手は、サイドスローやアンダースローの特殊なフォームなので今回は省きました。
このホップ成分量別の8グループについて検証していきたいと思います。
検証①「浮き上がるストレートは空振率、見逃率が高い」
上図はホップ成分別の空振率と見逃率で、明らかにホップ成分が多くなると空振率と見逃率が上昇しています。
浮き上がるストレートは空振率、見逃率が高い
検証②「沈むストレートは長打が打たれにくい」
上図はホップ成分別のリスク管理の図です。図の右側の長打の割合を見ると、平均の40cm付近が長打の割合が多く、沈むストレートは長打が打たれにくいことが分かります。
ただし、ホップ成分が45cm以上の方が長打の割合は少ないので、長打に関しては「浮き上がる>沈む>平均」と言えます。
浮き上がるストレートの方が長打が低いので、「沈むストレートは長打が打たれにくい」という意見は「△」
検証③「平均くらいのボールが一番打たれやすい」
上図はホップ成分別の被打率の図です。ホップ成分が多いほど被打率が低く、沈むストレートよりも平均40cm付近の方が被打率は低いです。そのため、被打率からは「平均くらいのボールが一番打たれやすい」と言えません。
ただし、前項のリスク管理では平均の40cm付近が長打の割合が多いです。「平均くらいのボールが一番長打を打たれやすい」とは言えます。
沈むボールの方が打たれやすい
平均くらいのボールが一番長打は打たれやすい
検証④「浮き上がるストレートは回転数が多く、球速が速い」
上図はホップ成分別の回転数と球速の図です。回転数に関してはホップ成分が上昇すると回転数も上昇しています。
球速はホップ成分が上昇すると、平均の40cm付近までは上昇しますが、40cm以上では逆に減速します。
回転数に関しては「〇」 球速に関しては「×」
検証⑤「浮き上がるストレートはシュート成分が少ない」
上図はホップ成分別の変化量の図です。
ホップ成分が上昇すると平均の40cm付近まではシュート成分が増加しますが、それ以降の浮き上がるストレートではシュート成分が減ります。
浮き上がるストレートはシュート成分が少ない
検証⑥「球持ちが良い投手の方が、ストレートは浮き上がりやすい」
上図はホップ成分別のリリースポイント(三塁側目線)の図で、右側がホームベースになります。
ホップ成分が上昇すると、リリースポイントはエクステンションが長く(球持ちが良く)なっています。
球持ちが良い投手の方が、ストレートは浮き上がりやすい
検証⑦「上から投げるほど、ストレートは浮き上がりやすい」
上図はホップ成分別のリリースポイント(捕手目線)の図です。
ホップ成分が上昇すると、リリースポイントは頭に近くなり、高くなっています。
上から投げるほど、ストレートは浮き上がりやすい
検証⑧「沈むとゴロが増え、浮くとフライが増える」
上図はホップ成分別の打球の種類比率です。
ホップ成分が上昇すると、ゴロが少なくなり、フライとポップフライが増えています。つまり、沈むボールはゴロが多く、浮き上がるようなボールはフライとポップフライが増えます。
沈むボールはゴロが増え、浮き上がるようなボールはフライとポップフライが増えます
結論「ストレートはホップした方が良い」
①浮き上がるストレートは空振率、見逃率が高い
③平均くらいのボールが長打を一番打たれやすい
④浮き上がるストレートは回転数が多い
⑤浮き上がるストレートはシュート成分が少ない
⑥球持ちが良い投手の方が、ストレートは浮き上がりやすい
⑦上から投げるほど、ストレートは浮き上がりやすい
⑧沈むとゴロが増え、浮くとフライが増える
②沈むストレートは長打が打たれにくい
③平均くらいのボールが一番打たれやすい
④浮き上がるストレートは球速が速い
以上のことから逆に言えば、浮き上がるようなストレートを投げるには「リリースポイントを高く、頭寄りに球持ちを良くすることで、シュート成分を減らして回転数を多くすること」だと言えます。
浮き上がるようなストレートは「空振率と見逃率が高く、安打や長打が打たれにくい球」なので、ストレートはホップ成分が多い方が良いと言えます。