第105回 【大谷翔平】自身初の無四球勝利の要因は?(2021年6月4日投球分析)
現地時間6月4日(日本時間5日)のマリナーズ戦に、投打のリアル二刀流の「2番投手」で出場し、投手としては6回4安打2失点10奪三振0四球で、自身初の無四球で2勝目。
打者としては2打数0安打1四球でした。第1打席は打球初速110.5マイル(約178キロ)の強烈な打球も、野手の正面を突く不運な遊ゴロ併殺打で、第2打席は四球、第3打席は遊ゴロでした。
今回はそんな「大谷翔平投手の2021年6月4日投球分析」を紹介します。
データはBaseball Savantを使用します。過去の投球分析については下記を参照して下さい。
1. バランスの良い配球
日別投球割合(2021年)
上図は2021年の登板日別の投球割合です。
前回(5月28日)はストレートの割合が66%と今季一番割合が多かったですが、今回(6月4日)はストレートの割合が45%で変化球も全体的にバランスの良い配球でした。
左右別投球割合
上図は6月4日の左右別の投球割合です。
右打者はストレート、フォーク、スラッター、スライダーの4球種が20%台と非常にバランス良く投げています。
左打者はストレートの割合が51%と少し高いので、もう少しスライダーの割合が増えると打者は的を絞りにくくなりそうです。
回別投球割合
上図は6月4日の回別投球割合です。
5回からストレートの投球割合が激減しています。明らかに5回から球威が落ちてきたストレートからスラッター中心の配球に変えたのが分かります。
2. 球速は回復傾向
球速・回転数(前回までとの比較
6月4日は平均151.8km/h、最高球速156.6km/hしか出ませんでした。回転数についてはいつもと同じくらいでした。
降板後、ベンチで右肘をマッサージする姿が見られました。まだ右肘に硬い感覚があって無理をしていないから、球速が出ていないのかもしれません。
回別平均球速
5回まではストレートの球速が安定していますが、6回にストレートが3km/h以上減速しています。前回も最終回の7回に減速していたので、交代のタイミングとしては良かったと思います。
日別平均球速
上図は2021年の登板日別の平均球速です。
球速が急激に減速した5月19日からストレートの球速は徐々に回復傾向です。
3. 今回は左打者に打たれた
対左右成績
左が前回まで、右が6月4日の対左右の成績です。
どちらかと言うと、今回は左打者に打たれました。特に被本塁打は今季すべて左打者から打たれています。やはりストレートの投球割合が高いので、今の球速だと狙い打たれると厳しいです。
球種成績
上が前回まで、下が6月4日の球種別被打率です。
やはり左打者はストレートの投球割合が多いので、左打者に打たれたのは全てストレートでした。
4. ストレートは珍しくシュートライズ傾向
上図は「2018年の平均」、「前回までの2021年の平均」、「今回(6月4日)」の変化量です。
いつもの大谷投手はストレートがスライド気味でしたが、今回(6月4日)はシュートライズする球が多かったです。ホップ成分はメジャー平均(40cm)以下なのは4球だけで、ほとんど45cm以上の伸びがあるストレートでした。
5. フォーク、スライダー、カーブのリリースがオーバー気味
上図は「2018年の平均」、「前回までの2021年の平均」、「今回(6月4日)」のリリースポイントです。
ストレート、スラッターはいつもと同じくらいのリリースポイントでしたが、フォーク、スライダー、カーブのリリースポイントがオーバー気味でした。特にカーブは今季は安定していませんでしたが、オーバー気味になったことでスライダー、カーブのリリースポイントが安定したように思います。
6. スラッター、スライダー、カーブの抜けた球が無い
上が前回まで、下が今回(6月4日)のスラッター、スライダー、カーブのベース上のボールの位置です。
今回(6月4日)はスラッター、スライダー、カーブが右打者の頭付近に抜けることがありませんでした。そのため、スラッターとカーブがカウント球として使えたことが無四球に繋がったと思います。
7. 軌道
6月4日の全球種の軌道です。
8. まとめ
①バランスの良い配球
②平均球速151.8km/h、最高球速156.6km/h
③6回にストレートが3km/h以上減速
④ストレートがシュートライズ傾向
⑤曲がる球種の抜け球が無かった
今回は「大谷翔平投手の2021年6月4日投球分析」を紹介しました。
今回(6月4日)はバランスの良い配球で、特に右打者の配球は4球種が20%台と非常にバランス良かったです。
スラッター、スライダー、カーブの抜け球が無く、スラッターとカーブがカウント球として使えたことが無四球に繋がったと思います。カーブはリリースポイントがオーバー気味になったことで、制球が安定したと考えられます。
やはり変化球がストライクゾーンに決まるとカウントが有利になる上に、次から相手は追い込まれる前の早いカウントから打つので投球数が抑えられるのも大きいです。
徐々に球速が回復傾向なので、次回登板が楽しみです。