第115回 【大谷翔平】スライダーは変化量が大きすぎて判定が厳しい?(2021年6月30日投球分析)
現地時間6月30日(日本時間7月1日)にヤンキースタジアムでのヤンキース戦に出場、投打のリアル二刀流の「2番投手」で先発しました。
投手としては1回持たず、0回2/3で2安打7失点、1奪三振5四死球と乱調しましたが、味方が最終回で7得点で大逆転。勝ち負けはつきませんでした。
打者としては1打数0安打で、外野の守備にはつかず、ベンチに下がりました。
この試合、「0回2/3で5四死球」とこの数字だけ見れば大乱調ですが、ストライクは41球中20球とそこまで悪くありません。また、上記ツイッターのボールと判定された図を見ると、何球かストライクゾーン内ですし、アウトローに際どいボールも多いです。
今回はそんな「大谷翔平投手の2021年6月30日投球分析」を紹介します。データはBaseball Savantを使用します。過去の投球分析については下記を参照して下さい。
1. スラッター、カーブは投げなかった
日別投球割合(2021年)
上図は2021年の登板日別の投球割合です。
今回はストレート、フォーク、スライダーの3球種でした。スラッター、カーブは投げませんでした。
2. 球速は回復傾向
球速・回転数(2021年平均との比較)
6月30日は平均154.6km/h、最高球速159.8km/hでした。今回は久しぶりに2021年の平均より速かったです。
回転数は平均並みで、最近の投球の中では回転数は多かったです。
日別平均球速
上図は2021年の登板日別の平均球速です。
球速が急に減速した5月19日からは回復傾向です。フォーク、スライダーの球速も上がってきたのは良い傾向だと思います。
3. 粘着物質による回転数の急な増減は見られない
粘着物質使用投手の不自然な回転数推移の例
今話題の粘着物質の使用により、回転数が急激に変化する投手の例が上の図です。
2017年までは一定だった回転数が、スパイダータックなどの粘着物質の使用により2018~2020年のどこかでだいたい300~500回転くらい急増加します。その後、取り締まりが強化される2021年6月までは高い値で一定で、取り締まりが強化された2021年6月に300~500回転くらい急減少します。
つまり次に該当する投手は粘着物質による回転数の増加が疑われます。
①2018~2020年のどこかで300~500回転くらい急増加
②2021年6月に300~500回転くらい急減少
③投球フォーム、球速には特に変化が無い
年別平均回転数(ストレート)
大谷投手は2020年までに比べて、2021年4月に250回転くらい急増加しています。ただし、これはトミージョン手術からのリハビリ過程で投球フォームを劇的に変えた影響だと考えられます。
2021年5月と取り締まり強化後の6月との差はほぼ同じで、誤差の範囲内です。そもそも大谷投手は5月の時点で回転数が減少傾向ですので、二刀流による疲労が主な原因と考えられます。
日別平均回転数(2021年)
全球種の当番日別の平均回転数です。
全球種が緩やかに回転数が減少傾向で、どこかで急に減少していません。特に粘着物質の取り締まり強化の報道が出た6月初旬以降に、急に回転数が減少していません。
このことから、大谷投手は粘着物質による回転数の増加はしていなかったのは明白です。
開幕当初から緩やかに減少傾向なので、二刀流による疲労が主な原因ではないかと思います。
直近2回の登板は全球種が緩やかに回転数が増加傾向です。
4. 今回も左打者に打たれた
球種成績
上が2021年、下が6月30日の球種別被打率です。
打たれたヒットは2本ともスライダーでした。
5. ストレートがツーシームやカットボールのような変化量
上図は「2021年の平均」、「今回(6月30日)」の変化量です。
ストレートは最近ホップ成分が少なかったですが、今回は平均ぐらいの変化量でした。スライダーは前回同様に変化量を抑えて、制球重視でした。
6. リリースがオーバー気味
上図は「2021年の平均」、「今回(6月30日)」のリリースポイントです。
本人の試合後のコメントで不調の原因は「引っかかりすぎた」と発言していましたが、その発言通りにリリースポイントは体に近く、リリースが遅いです。その分、アウトローに外れるボールが多かったのだと思います。
7. 大谷投手への判定は厳しい?
上図は判定はボール、トラックマンデータでストライクゾーン内の割合で、左から大谷投手の今回(2021年6月30日)、大谷投手の2021年(前回まで)、MLBの2020年平均です。
今回(2021年6月30日)に投じたのは41球でしたが、3球もゾーン内をボール判定されました。また、大谷投手はMLB平均に比べてボール判定の確率が高いです。つまり、大谷投手への判定は厳しいと言えます。
今回も含めて2021年にボールと判定されたスライダーは全て40cm以上の変化量でした。もしかしたら大谷投手のスライダーは変化量が大きすぎるために判定が厳しいのかもしれません。
8. まとめ
①スラッター、カーブは封印
②平均球速154.6km/h、最高球速159.8km/h
③球速、回転数、変化量は良かった
④リリースは引っかかり気味
⑤3球もゾーン内をボール判定
今回は「大谷翔平投手の2021年6月30日投球分析」を紹介しました。
本人の試合後のコメント「調子は良かったが、引っかかり気味だった」と言ったように、球速、回転数、変化量は最近の登板の中では良かったですが、リリースがデータ上も引っかかり気味でした。厳しい判定も多かったです。
調子自体は良く、球速も上がっているので、次回登板では威力のあるストレートを連発して、好投することを期待しています。