第223回 【大谷翔平】9奪三振快投も開幕黒星(2022年4月7日投球分析)
2022年4月7日、エンゼルスの大谷翔平投手は本拠地で行われたアストロズとの開幕戦で「1番・投手兼DH」で出場しました。今季から導入された「大谷翔平ルール」も適用され、MLBにとっても歴史的な1日となりました。
投球内容は4回2/3を80球9奪三振1四球、4安打1失点と好投しましたが、負け投手になりました。最速は160.6km/hと球威は十分で、圧巻の奪三振ショーでした。
今回はそんな「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年4月7日投球分析」を紹介します。
データはBaseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
1. 球種・投球割合
カーブを多投、スラッターは投げず
今回はストレート、スプリーム、フォーク、スライダー、カーブの5球種で、スラッターは投げませんでした。
かなり今回はカーブが多かったです。
※スラッターとスプリームについて
スラッターはカットボールの一種で、MLB平均より遅くて変化量が大きいスライダーに近いボールなので、当ブログではスラッターと呼称しています。
大谷投手の新球種スプリームは2021年9月10日のアストロズ戦で3回1/3を6失点とフォークの制球が出来ずに炎上したことがきっかけで、2021年9月19日から投球しました。
「大谷翔平投手は9月19日からフォークの握りを変えた」と、誤解されている記事をよく見ますが、実際は9月19日以降はスプリームと今までのフォークの両方を投げています。2021年のフォークのストライク率33%に対して、スプリームのストライク率45%と高く、スプリームは制球力重視でカウントも取れるボールです。
大谷投手自身は「チェンジアップなのかスプリットなのかよく分からないです。中間球みたいな球かなと思います。」と発言していて本人も名前を決めていないので、「千賀投手のスプリームと同じ握り、回転であること」から当ブログではスプリームと呼称しています。
左にカーブを多投
カーブは左打者に多投しています。一方、右打者にはスライダーの割合が多いです。
2. コース
打たれたのは真ん中寄りの甘い球
対左打者には真ん中付近にボールが集まっています。
左右ともに打たれたのは真ん中寄りの甘い球でした。一方、奪三振は全て際どいコースのボールばかりでした。
またスプリーム、フォークがほとんどストライクゾーンやベース上に無いです。
3. 各成績
左に打たれた
2021年同様に今回も左打者に5打数2安打と打たれました。
スプリームとフォークのゾーン内率が非常に低い
2021年同様にストレートが打たれましたが、三振も4つ奪っています。
今回の試合はスライダーが非常に優秀で、ゾーン内率が高いにも関わらず被安打0で、三振も3つ奪っています。またカーブもゾーン内率55%と非常に有効でした。
一方、スプリーム、フォークのゾーン内率が非常に低いのは課題です。
4. リリースポイント
球持ちがさらに良くなる
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。◇は2021年、△はMLB平均です。
2021年と比較すると、リリース位置が約7cmほど低く、体から遠いです。球持ちはさらに5cmほど良かったです。
5. 球速と回転数
平均球速157.3km/h、最高160.6km/h
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、◇は2021年、△はMLB平均を表しています。
ストレートの平均球速157.3km/h、最高160.6km/hでした。回転数は2133回転と少なったです。
平均球速は過去最速ペース
例年と比べても、今回の平均球速157.3km/hはかなり速いことが分かります。
ただし、2021年も最初の試合も平均157.9km/hを投げましたが、2試合目からは球速が落ちました。
6. 回転軸と変化量
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、◇は2021年、点線はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
ストレートがほぼカットボール
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、◇は2021年、△はMLB平均を表しています。
ストレートがホップ成分が31cm、シュート成分が2cmしかなく、ほぼカットボール状態です。2021年もスライド気味のストレートを投げていましたが、例年以上に真っスラです。
スライダーは時々横変化が小さく、ホップ成分が多かったです。大谷投手のスライダーは曲がりすぎて振ってもらえないことが多かったので、2021年後半から意図的に変化量を抑えてようです。
スプリーム、フォーク、カーブは2021年並みの変化量です。
まとめ
①カーブを多投、スラッターは投げず
②打たれたのは真ん中寄りの甘い球
③左に打たれた
④スプリームとフォークのゾーン内率が非常に低い
⑤球持ちがさらに良くなる
⑥平均球速157.3km/h、最高160.6km/h
⑦ストレートがほぼカットボール
⑧スライダーは時々ホップ成分が多い
そのため今回は「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年4月7日投球分析」を紹介しました。
投球内容は4回2/3を80球9奪三振1四球、4安打1失点と好投しましたが、負け投手になりました。平均球速157.3km/h、最高球速160.6km/hと球威は十分で、圧巻の奪三振ショーでした。
この試合カーブを多投し、スラッターは投げませんでした。スライダーが優秀で、横変化量が小さくてホップ成分が多い変化量で、ゾーン内率が高いにも関わらず被安打0、三振も3つ奪いました。
一方、スプリーム、フォークのゾーン内率が非常に低いのは課題です。
またストレートがホップ成分が31cm、シュート成分が2cmしかなく、ほぼカットボール状態でした。これがスラッターを投げなかった要因かもしれず、フォークとの相性も考えるとあまり良くないかもしれません。
次回登板では今回の課題も修正してくると思うので、次回登板が楽しみです。