第260回 【大谷翔平】7回10Kで8勝目&ツーシームを初投球?(2022年7月6日投球分析)
2022年7月6日、大谷翔平投手(28)が敵地ローンデポ・パークでのマーリンズ戦に「3番・投手兼DH」で投打同時出場。
7回を投げて100球、被安打2、四死球3、奪三振10、1失点、自責0の投球内容で8勝目。
自責点が公式記録となった1913年以降で、4試合連続10奪三振かつ自責0は史上9回目の快挙でした。
打っては決勝の2点タイムリーで自らを援護するなど4打数1安打、2打点、1盗塁の「投打走」の活躍でした。打点が公式記録となった1920年以降で、10奪三振、2打点、1盗塁はMLB史上初の快挙でした。
1回に失策絡みで失点して、2回も四球などでピンチを招きますが、3回以降は打たれる1安打も許すことない圧倒的な投球でした。7回1死から1球だけですが、ツーシームも初投球しました。
今回はそんな「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年7月6日投球分析」を紹介します。
データはBaseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
1. 球種・投球割合
4球種をバランスよく投球
今回はストレート、ツーシーム、フォーク、スライダー、カーブの5球種を投球しました。
スラッター、スプリームは投げませんでした。
※当ブログでは「カットボールをスラッター」と「第二のスプリットをスプリーム」と呼称しています。詳細は過去記事を参照して下さい。
左右関係ない配球
上は前回登板までの2022年平均、下は今回の左右投球割合です。
いつもより左打者にスライダーを多投したことにより、左右の投球割合が同じくらいでした。
2. コース
左は低め、右はアウトコース中心
いつもはアウトコース中心の投球ですが、今回はコースに関係なく左は低めが多いです。
一方、右打者はアウトコースに偏っています。特にスライダーはアウトコースのボール球で空振りを量産しました。
3. 各成績
右打者を抑えた
上図は今回、前回登板までの2022年平均、MLB右投手平均の左右別被OPSです。
左打者に3試合ぶりの長打を打たれましたが、打たれたのはその1安打だけでした。
スタメンの7人が右打者でしたが、前述通りスライダーで空振りを量産したことで抑えました。
スライダーで空振り、見逃しを量産
今回は空振りが21個(前回24個)と、前回同様に空振りを多く取れました。
特にスライダーは前回同様に空振りが11個、見逃しが10個と驚異的な数字です。
全体としても前回同様にストライク率63%(前回69%)、ゾーン内率47%(前回43%)とボールゾーンを多く振らせていました。
4. リリースポイント
スライダー、カーブだけリリース位置が変わった
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。◇は2022年平均、△はMLB平均です。
ストレート、フォークはいつも通りのリリース位置でしたが、スライダー、カーブだけ体から遠く、低いです。これがいつも以上の回転数と変化量を生んだ要因と考えられます。
またスライダーは1球だけほぼサイドスローで投げました。
初投球のツーシームはスライダーに近いリリース位置です。
一方、球持ちはいつもぐらいでした。
5. 球速と回転数
平均球速157.6km/h、最高162.4km/h
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、◇は2022年平均、△はMLB平均を表しています。
ストレートは平均球速157.6km/h、今季最速タイの最高球速162.4km/h、回転数は2220回転でした。
初投球のツーシームは球速160.5km/hと超高速ですが、回転数は1951回転と少ないです。
いつもよりスライダー、カーブの回転数が多いです。
カーブはカウントを取るスローカーブと、球速が速く回転数が多く決め球のパワーカーブの2種類を投げ分けていました。
今季の中では球速は速く、回転数は平均的
ストレートは平均球速157.6km/hで今季の中では速い方でした。回転数は2220回転と今季の中では平均的でした。
4〜6回は平均が100マイル
ピンチを招いた1,2回はそこまででしたが、打者を圧倒した4〜6回は平均100マイル(160.9km/h)と球速が出ていました。
7回は156.0km/hまで落ちましたが、ツーシームが球速160.5km/h出ていたので、球威が落ちた印象はありませんでした。
6. 回転軸と変化量
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、◇は2022年、点線はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
初投球のツーシームの回転軸はMLB平均よりシュート方向寄りです。
ツーシームは超高速で変化量が大きい
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、◇は2022年、△はMLB平均を表しています。
ストレートは真っスラが少なく、ホップ量が今季最大でした。
ツーシームはシュート成分46cmで落差も大きい、超高速で変化量が大きいMLBトップレベルのボールです。
フォークは落差が大きく安定。
スライダーは横変化量が多い球が増加して、平均45cmと驚異的な数字です。
カーブは変化量が多い球が増加しています。
まとめ
①ツーシームを初投球?
②右のアウトコースのスライダーで空振りを量産
③左打者にスライダーを多投
④空振りが21個(前回24個)
⑤スライダーで空振り11個、見逃し10個
⑥平均球速157.6km/h、2220回転
⑦最速162.4km/h
⑧スライダー、カーブだけリリース位置が変わり、回転数と変化量アップ
⑨ストレートのホップ量が今季最大
⑩ツーシームは超高速で変化量が大きい
⑪フォークは落差が大きく安定
今回は「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年7月6日投球分析」を紹介しました。
7回を投げて100球、被安打2、四死球3、奪三振10、1失点、自責0の投球内容で8勝目。
ストレート、フォークはいつも通りのリリース位置でしたが、スライダー、カーブだけ体から遠く、低かったです。これがいつも以上の回転数と変化量を生んだ要因と考えられます。
そのためスライダーは右のアウトコースで空振りを量産し、左打者にも多投しました。
ストレートは平均球速157.6km/hと球威があり、特に4〜6回は平均100マイル(160.9km/h)と球速が出ていました。また真っスラが少なく、ホップ量が今季最大でした。
ツーシームは球速160.5km/h、シュート成分46cmで落差も大きい、超高速で変化量が大きいMLBトップレベルのボールです。ただし、ツーシームを投球後に2者連続四球だったことを考えると、他球種に悪影響を及ぼす危険性があります。