第329回 【大谷翔平】2022年の投球分析(成績・球種・球速・変化量など)
2022年は大谷翔平投手の全試合の投球分析を記事にしましたが、総括をしていませんでした。
そのため今回は「【大谷翔平】2022年の投球分析(総括)」を紹介します。
紹介するのは年度別成績、球種・投球割合、コース別成績、対左右成績、得点圏成績、球種別成績、被打球種類、リリースポイント、球速と回転数、変化量などです。
使用するデータはBaseball SavantとFanGraphsです。
1. 年度別成績
ほぼ全てがキャリアハイ
投手としては2018~2020年は怪我で年間投げることが出来ませんでしたが、2021年と2022年は年間を通して活躍出来ました。
2022年の成績は
9勝2敗→15勝9敗(MLB8位)
防御率3.18→2.33(MLB6位)
WHIP1.09→1.01(MLB12位)
被打率.205→.203(MLB10位)
奪三振率10.8→11.9(MLB2位)と2021年に続いてエース級の成績を残しました。
投球回は増えましたが2021年より被本塁打率が2.8%→2.1%に減少しました。(MLB平均2.9%)
また与四死球率は3.7→2.5と大きく良化しました。(MLB平均3.4)
2. 球種・投球割合
2022年ツーシーム、縦スラを新たに投球
上は年別、下は日別の投球割合で、色が球種を表しています。
2022年の大谷翔平投手の持ち球はストレート、ツーシーム、スプリーム、フォーク、カットボール、縦スラ、スライダー、カーブの8球種でした。
2022年は新たにツーシーム、縦スラの2球種が増えましたが、4月20日以降はスプリームは投げませんでした。
2022年はスライダーの投球割合が22%→38%に増加し、ストレートの投球割合は44%→28%に減少しました。
※スプリームはMLB平均のスプリットに近いツーシームジャイロ回転のボールですが、「千賀投手のスプリームと同じ握り、回転であること」から当ブログではスプリームと呼称しています。
左右で変化球を使い分けている
上図は左右別投球割合で、色が球種を表しています。
右打者にはツーシームとスライダーを多投しています。
左打者にはフォークとカットボールと縦スラとカーブを多投しています。
ツーシームとカットボールはカウント球、フォークと縦スラは決め球
ツーシームとカットボールはカウント球、フォークと縦スラは決め球のカウントで多投しています。
ストレートとスライダーはどのカウントでもあまり変わらず投球しています。
カーブは初球と決め球で多投しています。
3. コース別成績
高めにストレート、低めにフォーク
ストレートは高め、ツーシームは右打者のインコース、フォークと縦スラとカーブは低めで多くの空振りを奪っています。
カットボールとスライダーは右打者のインハイからアウトローで多く空振りを奪っています。
右には高めアウトロー、左にはインハイとアウトハイ〇
右打者には高めとアウトロー、左打者にはインハイとアウトハイの成績が良いです。
右打者には高さ、左打者にはコースが甘いと打たれる傾向です。
4. 対左右成績
対左打者がやや苦手
2018年は対左打者に強かったですが、2021年同様に左打者の方が打たれています。
しかし2021年に比べると対左打者の成績は
被打率.230→.221
OPS.719→.636
本塁打率4.3%→2.5%
奪三振率26%→32%と大きく改善しています。
5. 得点圏成績
得点圏では球速が上がる
2021年同様に得点圏の被打率.164、被OPS.476と、それ以外の場面より数字が高いので対ピンチに強いです。
大谷翔平投手は得点圏ではギアが上がり、球速が156.0km/hから158.2km/hまで2.2km/hも上がります。
6. ホームアウェイ成績
アウェイで与四死球率上昇
ホームとアウェイでは防御率が1点以上も違い、ホームの方が得意としています。
被打率などはそれほど差がないですが、アウェイでは与四死球率が高いです。アウェイだとコンディション調整の関係で制球が上手く出来ていない可能性があります。
7. 球種別成績
ツーシームを投げ始めてストレート被打率が良化
左はOPSのグラフ、右は空振りなどのグラフ、下は球種別の成績です。
ストレートはゾーン内率59%と高いので他球種より打たれています。2021年に比べると被打率.293→.281、被OPS.922→.751と成績が良化しました。これはツーシームの影響と考えられ、ツーシームを本格的に投げ始めた8月15日以降は被打率.295→.229まで良化しました。
ツーシームは右打者に多投しており、対右の被打率.182、被OPS.455と右打者にかなり優秀です。
フォークは被打率.125、被OPS.375、空振率26%と左右関係なくかなり優秀です。
カットボールはゾーン内率59%と高いので被打率.306、被OPS.819と大谷翔平投手の中で1番打たれている球種です。対左の被打率.214、被OPS.624と左打者には優秀です。
縦スラは被打率.105、被OPS.237、空振率23%と左右関係なくかなり優秀ですが、対左打者には空振率28%とさらに強力です。
スライダーは対右の被打率.135、被OPS.387、空振率23%と右打者にはかなり優秀です。またストライク率72%と驚異的な数字です。
カーブは対左の被打率が悪いですが、被OPSとしては左右差があまりありません。
全体ではゾーン内率52%(MLB平均48.5%)、ストライク率65%(MLB平均64.2%)とゾーン内で勝負出来ています。
8. 被打球種類
新球種ツーシーム、縦スラはゴロ率70%以上
大谷投手は2022年のポップフライ率9%(MLB平均7%)、フライ率27%(MLB平均23%)と高いフライボーラーです。
新球種ツーシームはゴロ率80%、縦スラはゴロ率70%とゴロを打たせる球質です。
9. リリースポイント
縦スラはオーバー気味
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均のリリースポイントです。
2021年よりリリースは体から遠く低いです。
新球種の縦スラはリリースが高くオーバー気味で、スライダーとは大きく異なります。
2021年同様にエクステンションは長く球持ちがかなり良いです。
10. 球速と回転数
平均球速156.5km/h、最高163.2km/h
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートの平均球速156.5km/hはMLB先発10位、最高球速163.2km/hはMLB先発5位でした。回転数は2220回転と平均くらいです。
ツーシームも同様にMLB先発トップレベルの球速です。
フォークは平均球速143.6km/hとMLB8位の球速でした。
カットボール、縦スラ、スライダーはMLB平均よりやや速く、回転数は平均的です。2021年に比べると5km/h以上も高速化しています。
カーブはNPB平均くらいのスローカーブ、MLB平均くらい球速が速く回転数が多いパワーカーブを投げ分けていました。
球速がV字回復
2019年にTJ手術を受けて球速が150.9km/hまで低下しましたが、2022年は156.5km/hまでV字回復しました。
回転数も手術前より50回転前後増えています。
疲労で球速低下?
2021年はTJ手術の影響か急に球速が落ちることがありましたが、2021年は年間通して平均球速153〜159km/hと安定していました。
ただ東海岸やシアトルの遠征や連戦だと疲労が原因で球速が低下しやすいみたいです。
尻上がり
ストレートの平均球速が1回は155.8km/hですが、6回には157.5km/hと尻上がりに球速が上がっていきます。
8回でもストレートは156.9km/h、ツーシームは158.6km/hと速球は球速を維持していますが、変化球は全体的に球速が低下しています。
11. 変化量
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、点線はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
スライダーの回転軸はMLB平均よりも大きくカーブ側に近いです。
ストレートは真っスラ
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートはシュート成分が9cm少ない真っスラです。
ツーシームとはMLB平均より約5cm変化量が大きいです。
フォークはシュート成分が少なく、ストレートとの落差が31cmもあります。
カットボールはMLB平均よりも縦変化量が約6cmも大きく、縦に落ちるボールです。
縦スラはMLB平均のスライダーよりも縦変化量が約15cmも大きく、縦に落ちるボールです。
スライダーはスライド成分が36cmもあり、MLB平均よりも20cmも横に大きく曲がるスイーパーです。
カーブはMLB平均より約10cm縦変化量が大きいです。
まとめ
年度別成績
①2022年は全成績キャリアハイ
9勝2敗→15勝9敗(MLB8位)
防御率3.18→2.33(MLB6位)
WHIP1.09→1.01(MLB12位)
被打率.205→.203(MLB10位)
奪三振率10.8→11.9(MLB2位)
②被本塁打率が2.8%→2.1%に減少
(MLB平均2.9%)
③与四死球率が3.7→2.5に減少
(MLB平均3.4)
球種・投球割合
①ツーシームと縦スラを新たに投球
②スプリームは4月20日以降に投球0
③スライダーが22%→38%に増加
④ストレートが44%→28%に減少
⑤右打者にはツーシームとスライダーを多投
⑥左打者にはフォークとカットボールと縦スラとカーブを多投
⑦ツーシームとカットボールはカウント球
⑧フォークと縦スラは決め球
⑨カーブは初球と決め球で多投
コース別成績
①球種ごとに空振りを奪うコースが異なる
ストレートは高め
ツーシームは右打者のインコース
フォークと縦スラとカーブは低め
カットボールとスライダーは右打者のインハイからアウトロー
②右打者には高さ、左打者にはコースが甘いと打たれる傾向
対左右成績
①対左打者の方がやや苦手
対右の被打率.188、被OPS.518
対左の被打率.221、被OPS.636
②対左打者の成績改善
被打率 .230→.221
被OPS .719→.636
本塁打率 4.3%→2.5%
奪三振率 26%→32%
得点圏成績
①対ピンチに強い
得点圏の被打率.164、被OPS.476
②ピンチでギアが上がる
球速 156.0km/h→158.2km/h
ホームアウェイ成績
①ホームに強い
防御率 ホーム1.82、アウェイ2.92
②アウェイで与四死球率上昇
与四死球率 ホーム4%、アウェイ10%
球種別成績
①ストレート被打率がツーシームにより良化
ストレート被打率.295→.229
②ツーシームは右打者に優秀
対右の被打率.182、被OPS.455
③フォークは左右共にかなり優秀
被打率.125、被OPS.375、空振率26%
④カットボールは左打者に優秀
対左の被打率.214、被OPS.624
⑤縦スラは左打者にかなり優秀
対左の被打率.083、被OPS.237、空振率28%
⑥スライダーは右打者にかなり優秀
対右の被打率.135、被OPS.387、空振率23%
⑦カーブは被OPSの左右差無し
⑧全体ではゾーン内率52%
(MLB平均48.5%)
被打球種類
①ポップフライボーラー
ポップフライ率9%(MLB平均7%)
②フライボーラー
フライ率27%(MLB平均23%)
③新2球種はゴロ率高い
ツーシームはゴロ率80%、縦スラはゴロ率70%
リリースポイント
①2021年よりリリースは体から遠く低い
②縦スラはオーバー気味
③スライダーはサイド気味
④球持ちがかなり良い
エクステンションはMLB平均の20cm以上
球速と回転数
①ストレート平均球速156.5km/h
(MLB先発10位)
②ストレート最高球速163.2km/h
(MLB先発5位)
③ストレート回転数は2220回転と平均くらい
④フォークは平均球速143.6km/hと高速
(MLB8位)
⑤カットボールとスライダーが高速化
2021年より5km以上UP
⑥カーブは2種類
NPB平均くらいのスローカーブ
球速が速く回転数が多いパワーカーブ
⑦TJ手術後から球速がV字回復
150.9→153.8→156.5
⑧TJ手術前より50回転前後増加
⑨疲労が原因で球速が低下?
東海岸やシアトルの遠征や連戦だと球速低下
⑩尻上がり
1回155.8km/h→6回157.5km/h
変化量
①ストレートは真っスラ
②ツーシームは変化量大
③フォークはシュート成分が少ない
ストレートとの落差が31cm
④カットボールは縦変化量大
⑤縦スラは縦変化量大
ストレートとの落差が47cm
⑥スライダーは横変化量大
スライド成分36cmのスイーパー
⑦カーブは縦変化量大