第441回 【大谷翔平】2023年の投球分析(成績・球種・球速・変化量など)
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(2023年)
今回は「大谷翔平投手の2023年の投球分析(総括)」を紹介します。
紹介するのは年度別成績、球種・投球割合、コース別成績、対左右成績、得点圏成績、球種別成績、被打球種類、リリースポイント、球速と回転数、変化量などです。
使用するデータはBaseball SavantとFanGraphsです。
1. 年度別成績
8月24日に右肘を負傷
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(2023年)
投手としては8月23日(日本時間24日)のレッズ戦で右肘の内側側副靭帯を損傷して、2023年の最終登板になりました。
2023年の成績は
15勝9敗→10勝5敗
防御率2.33→3.14
WHIP1.01→1.06
被打率.203→.184
奪三振率11.9→11.4と2021年から3年連続でエース級の成績を残しました。
昨年より被打率が減少しましたが、与四死球率は2.5→4.5と大きく悪化したのでWHIPは悪くなりました。
ツーシームはゴロ率68%
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(2023年)
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(2023年)
大谷投手は2023年のポップフライ率8%(MLB平均7%)、フライ率26%(MLB平均23%)と高いフライボーラーです。
ツーシームはゴロ率68%とゴロを打たせる球質です。

2. 球種・投球割合
2023年はフォークの投球割合減少
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(2023年)
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(2023年)
上は年別、下は日別の投球割合で、色が球種を表しています。
2023年の大谷翔平投手の持ち球はストレート、ツーシーム、スプリーム、フォーク、カットボール、縦スラ、スライダー(スイーパー)、カーブの8球種でした。
2022年は新たにツーシーム、縦スラの2球種が増えましたが、2023年も継続して投球しました。
2023年前半戦はスライダーの投球割合が増加しましたが、2023年全体としては2022年の方が投球割合が多かったです。
2023年はフォークの制球に苦しみ、似た球種のスプリームを試したりしましたが上手くハマりませんでした。そのためフォークの投球割合は11%→4%に減少しました。

※MLB平均のスプリットに近いツーシームジャイロ回転のボールを当ブログではスプリームと呼称しています。
左右で変化球を使い分けている
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(2023年)
上図は左右別投球割合で、色が球種を表しています。
右打者にはツーシームとスライダーを多投しています。
左打者にはフォークとカットボールと縦スラとカーブを多投しています。

ツーシームとカットボールはカウント球、フォークと縦スラは決め球
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(2023年)
ツーシームとカットボールはカウント球、フォークと縦スラは決め球のカウントで多投しています。
ストレートとスライダーはどのカウントでもあまり変わらず投球しています。
カーブは初球と決め球で多投しています。

3. コース別成績
高めにストレート、低めにフォーク
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各球種、次のコースの空振りが多いです。
ストレートは高め
ツーシームは右インコース
フォークと縦スラとカーブは低め
カットボールは右インハイと左インロー
スライダーは右アウトローと左インローで多く空振りを奪っています。

右にはアウトロー、左にはインハイとアウトハイ〇
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(2023年)
右打者にはアウトロー、左打者にはインハイとアウトハイの成績が良いです。

4. 対左右成績
対左打者に本塁打を多く打たれた
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(2023年)
2018年は対左打者に強かったですが、2021年~2022年同様に左打者の方が打たれています。
しかし2022年に比べると対左打者の成績は
被打率.221→.197
OPS.636→.653
本塁打率2.5%→4.3%
と被打率は向上しましたが、被本塁打率が高くなってしまいました。

5. 得点圏成績
2023年は得点圏で打たれた
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(2023年)
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(2023年)
2022年までは対ピンチに強かったですが、
2023年は得点圏の被打率.164→.232、被OPS.476→.775と、対ピンチに弱くなりました。
ただ大谷翔平投手は得点圏ではギアが上がり、球速が155.2km/hから157.2km/hまで2.0km/hも上がります。

6. ホームアウェイ成績
ホーム得意
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(2023年)
ホームとアウェイでは防御率が1点以上も違い、ホームの方が得意としています。
被打率などはそれほど差がないですが、アウェイでは被本塁打率が高いです。アウェイだとコンディション調整の関係で制球が上手く出来ていない可能性があります。

7. 球種別成績
ストレート被打率が良化
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(2023年)
左はOPSのグラフ、右は空振りなどのグラフ、下は球種別の成績です。
ストレートはゾーン内率58%と高いので他球種より打たれやすいにも関わらず、2022年に比べると被打率.281→.165、被OPS.751→.547と成績が良化しました。
ツーシームは右打者に多投しており、被OPS.691と右打者に優秀です。ただストライク率が55%と低いです。
フォークは被打率.156、被OPS.369、空振率20%と左右関係なくかなり優秀ですが、ストライク率が51%と低いです。
カットボールはゾーン内率57%と高いので被打率.341、被OPS1.056と大谷翔平投手の中で1番打たれている球種です。
縦スラは被打率.280、被OPS.997と打たれていますが、空振率18%と空振りを多く奪えています。
スライダーは対右の被打率.139、被OPS.565、空振率18%と左右関係なくかなり優秀です。またストライク率67%と驚異的な数字です。
カーブは被打率.111、被OPS.278、空振率13%と優秀ですが、ストライク率とゾーン内率が低いです。
全体ではゾーン内率52%(MLB平均48.5%)、ストライク率64%(MLB平均64.2%)とゾーン内で勝負出来ています。

8. リリースポイント
縦スラのリリースが低くなった
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(2023年)
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均のリリースポイントです。
全体的に2022年よりリリースは体に近く低いです。
特に縦スラは低くなりました。
2022年以上にエクステンションは長く球持ちがかなり良いです。

9. 球速と回転数
平均球速155.8km/h、最高162.9km/h
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(2023年)
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートの平均球速155.8km/hはMLB先発19位、最高球速162.9km/hはMLB先発9位でした。回転数は2258回転と平均くらいです。
ツーシームは156.4→152.0km/h、
フォークは143.6→141.5km/h
カットボールは146.3→144.2km/h
スライダーは137.3→134.6km/h
カーブは125.2→121.8km/h
と変化球の球速が低下しました。

球速がV字回復
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(2023年)
2019年にTJ手術を受けて球速が150.9km/hまで低下しましたが、2022年は156.5km/hまでV字回復しました。2023年も155.8km/hと球速を維持しました。
回転数も手術前より50回転前後増えています。

怪我前の8/3は平均158.8km/h
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(2023年)
8月9日までは年間通して平均球速153〜159km/hと安定していて、8月3日は平均158.8km/hも出ていました。しかし、8月23日は右肘負傷の影響か149.4km/hと急激な球速低下でした。

9回まで球速維持
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(2023年)
9回でも平均156.1km/hと球速維持してます。

10. 変化量
回転軸
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上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、点線はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
スライダーの回転軸はMLB平均よりも大きくカーブ側に近いです。
ストレートは真っスラ
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(2023年)
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートはシュート成分が10cmと少ない真っスラです。
ツーシームはMLB平均くらいの変化量です。
スプリームはMLB平均のスプリットくらいの変化量です。
フォークはシュート成分が少なく、ストレートとの落差が36cmもあります。ただし、2023年は落ちないフォークが多くありました。
カットボールはMLB平均よりも縦変化量が約6cmも大きく、縦に落ちるボールです。
縦スラはMLB平均のスライダーよりも縦変化量が大きく縦に落ちるボールですが、2022年より縦変化量が9cmも小さかったです。
スライダーはスライド成分が40cmもあり、MLB平均よりも21cmも横に大きく曲がるスイーパーです。
カーブはMLB平均より約11cm縦変化量が大きいです。

まとめ
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(2023年)
【年度別成績】
①2023年
15勝9敗→10勝5敗
防御率2.33→3.14
WHIP1.01→1.06
被打率.203→.184
奪三振率11.9→11.4
②与四死球率は2.5→4.5と大きく悪化
③フライ率26%と高い
④ツーシームはゴロ率68%
【球種割合】
①8球種
②フォークの投球割合が減少
(11%→4%)
③右にはツーシームとスライダーを多投
④左にはフォークとカットボールと縦スラとカーブを多投
⑤ツーシームとカットボールはカウント球
⑥フォークと縦スラは決め球
【コース】
①次のコースの空振りが多い
ストレートは高め
ツーシームは右インコース
フォークと縦スラとカーブは低め
カットボールは右インハイと左インロー
スライダーは右アウトローと左インロー
②右アウトロー〇
③左インハイとアウトハイ〇
【対左右・得点圏成績・ホーム】
①左の被打率は良化(左被打率.197)
⇒ただ左被本塁打率は悪化(2.5%→4.3%)
②得点圏の成績悪化
(被OPS.476→.775)
③得点圏では球速上昇
(155.2km/h→157.2km/h)
④ホーム〇
防御率2.70
被打率.177
【球種別成績】
①ストレートの被打率良化
(.281→.165)
②ツーシームは右打者〇(右被OPS.691)
③フォークは被打率.156と優秀
⇒ストライク率が51%と低い
④カットボールは被打率.341
⑤スライダーは対右の被打率.139と優秀
⇒ストライク率が67%と高い
⑥カーブは被打率.111と低い
⇒ストライク率とゾーン内率が低い
【リリース】
①2022年よりリリースは体に近く低い
(特に縦スラ)
②球持ち◎
⇒2023年はさらにエクステンションが大きい
【球速・回転数】
①平均球速155.8km/h(MLB先発19位)
②最高球速162.9km/h(MLB先発9位)
③変化球が球速低下
⇒特にツーシームは156.4→152.0km/h
④怪我前の8/3は平均158.8km/h
⇒8/23は149.4km/hまで低下
⑤9回まで球速維持
【変化量】
①ストレートは真っスラ
②ツーシーム、スプリームは平均的
③フォークはシュート成分が少ない
⇒2023年は落ちないフォークが多い
④カットボールは縦変化量大
⑤縦スラは縦変化量大
⇒2022年よりは縦変化量少ない
⑥スライダーはスライド成分40cm
⑦カーブは変化量大
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