第113回【大谷翔平】粘着物質チェックを2度受ける(2021年6月23日投球分析、平均回転数の推移)
現地時間6月23日(日本時間24日)に本拠地でのジャイアンツ戦に出場、投打のリアル二刀流の「2番投手」で先発しました。
投手としては6回6安打1失点1被本塁打、9奪三振2四球と好投しましたが、勝ち負けはつきませんでした。
打者としては3打数0安打で、外野の守備にはつかずにベンチに下がりました。
この試合、2回終了後と4回終了後の2度粘着物質の使用チェックを受けましたが、大谷投手は笑顔を見せながら対応していました。
今回はそんな「大谷翔平投手の2021年6月23日投球分析」を紹介します。データはBaseball Savantを使用します。過去の投球分析については下記を参照して下さい。
1. 球種のバランスが良い
日別投球割合(2021年)
上図は2021年の登板日別の投球割合です。
今回は球種の偏りは無く、ストレート、フォーク、スラッター、スライダーをバランス良く投球していました。カーブは投げませんでした。
左右別投球割合
上図は6月23日の左右別の投球割合です。
今までは右打者よりも左打者にストレートの割合が多かったですが、今回は左右でほぼストレートの割合が同じくらいでした。左打者にはストレート、フォーク、スラッター、スライダーをバランス良く投球していました。
回別投球割合
上図は6月23日の回別投球割合です。
「初回は体が重く、徐々に体が動くようになった」と試合後のインタビューで答えた通り、初回にストレートが走っていなかったので3,4回はスラッター中心の投球に変わりました。5,6回はストレートが走るようになり、5,6回はストレート中心に切り替わりました。
2. 球速は回復傾向
球速・回転数(2021年平均との比較)
6月23日は平均152.2km/h、最高球速159.6km/hでした。序盤はスピードが出ていませんでしたが、3回以降は155km/h前後をコンスタントに投げ込んでいました。
スラッターの平均球速が今年の平均より2~3km/h速く、ストレートに近い球速でした。よりストレートとの見極めがしにくくなっていて、良い兆候だと思います。
全体的に回転数は少なめでした。
回別平均球速
1,2回は140m/h後半のストレートが多かったですが、3回以降は155km/h前後をコンスタントに投げ込んでいました。
日別平均球速
上図は2021年の登板日別の平均球速です。
今回は1,2回に140m/h後半のストレートが多かった分、平均152.2km/hでした。ただ、球速が急に減速した5月19日からは回復傾向です。
3. 粘着物質による回転数の急な増減は見られない
粘着物質使用投手の不自然な回転数推移の例
今話題の粘着物質の使用により、回転数が急激に変化する投手の例が上の図です。
2017年までは一定だった回転数が、スパイダータックなどの粘着物質の使用により2018~2020年のどこかでだいたい300~500回転くらい急増加します。その後、取り締まりが強化される2021年6月までは高い値で一定で、取り締まりが強化された2021年6月に300~500回転くらい急減少します。
つまり次に該当する投手は粘着物質による回転数の増加が疑われます。
①2018~2020年のどこかで300~500回転くらい急増加
②2021年6月に300~500回転くらい急減少
③投球フォーム、球速には特に変化が無い
年別平均回転数(ストレート)
大谷投手は2020年までに比べて、2021年4月に250回転くらい急増加しています。ただし、これはトミージョン手術からのリハビリ過程で投球フォームを劇的に変えた影響だと考えられます。
2021年5月と取り締まり強化後の6月との差は50回転ほどしかなく、誤差の範囲内です。そもそも大谷投手は5月の時点で回転数が減少傾向ですので、二刀流による疲労が主な原因と考えられます。
日別平均回転数(2021年)
全球種の登板日別の平均回転数です。
全球種が緩やかに回転数が減少傾向で、どこかで急に減少していません。特に粘着物質の取り締まり強化の報道が出た6月初旬以降に、急に回転数が減少していません。
このことから、大谷投手は粘着物質による回転数の増加はしていなかったのは明白です。
開幕当初から緩やかに減少傾向なので、二刀流による疲労が主な原因ではないかと思います。
4. 今回も左打者に打たれた
対左右成績
左は2021年の平均、右が6月23日の対左右の成績です。
今回も相手チームは大谷投手対策で、左打者を多く打線に並べてきました。残念ながら今回も左打者に多く打たれました。左打者への球種割合は悪くはないと思います。
球種成績
上が2021年の平均、下が6月23日の球種別被打率です。
課題の左打者には全球種打たれました。ただ、球種のバランスが良かったからかストレートは左右共に被打率が低かったです。
5. ストレートがツーシームやカットボールのような変化量
上図は「2021年の平均」、「今回(6月23日)」の変化量です。
今回は序盤にストレートに力が無かった印象でしたが、やはり変化量もホップ成分が少なく、ツーシームやカットボールのような変化量でした。スライダーは前回同様に変化量を抑えて、制球重視でした。
6. リリースがオーバー気味
上図は「2021年の平均」、「今回(6月23日)」のリリースポイントです。
リリースポイントは「体が重かった」という発言通り、いつもより少し体に近かったです。
7. まとめ
①カーブは封印
②平均球速152.3km/h、最高球速159.6km/h
③1,2回は140m/h後半、3回以降は155km/h前後
④回転数の推移から粘着物質は使用していない
⑤ストレートはツーシームやカットボールのような変化量
⑥スライダーは変化量を抑えて制球重視
今回は「大谷翔平投手の2021年6月23日投球分析」を紹介しました。
今回は球種のバランスが良かったですが、カーブは封印していました。平均回転数の推移からは大谷投手が粘着物質を使用してないのは明白でした。
東海岸ロード13連戦中と疲労が溜まりやすいのでストレートではなく、次回登板はスラッター主体の投球になりそうです。次回登板は、中6日で30日(同7月1日)の敵地ヤンキース戦の予定で、英雄ベーブ・ルースの再来と言われる二刀流がニューヨークを席巻する次回登板が楽しみです。