第216回 【有原航平】球種のクセがバレてる?(2021年投球分析)
レンジャーズ傘下の3Aラウンドロックに所属する有原航平投手は、スプリングトレーニングには招待選手として参加。
2022年3月21日、ガーディアンズとの試合で初登板しましたが、1回2/3を投げ、3安打5失点、2四球という投球内容でした。
2022年3月26日、ロッキーズ戦に登板し、2回6安打5失点とまたもや苦しい投球でした。その後、マイナーキャンプ降格が発表されました。
今回はそんな「【レンジャーズ】有原航平投手の2021年の投球分析」を紹介します。
Baseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
1. 年度別成績
クセがバレている?
メジャー1年目の2021年シーズンは開幕から4試合全て3失点以下(2試合無失点)と安定した活躍を見せていました。しかし、2021年4月25日の敵地シカゴでの気温6度と冷え込んだ中での試合では、初回に制球が乱れて4四球と荒れ、2回5失点とKOされました。試合後に「際どい球を見逃していたし、相手は何(球種)が来るか分かっていた」とレンジャーズ監督がコメントした通り、この試合から3試合連続で5失点以上と打ち込まれました。
そして、5月9日に右手中指の打撲で故障者リスト入りすると、右肩動脈瘤が発見されて手術を受けました。
9月1日に復帰しましたが、9月15日に6失点と打ち込まれたことでDFA(戦力外)、マイナー契約になってメジャー1年目の2021年シーズンを終えました。
2021年の成績は防御率6.64、被打率.281、奪三振率5.3、与四死球率3.8でした。
有原航平投手の特徴としては、球速は速くないですが、変化球が多彩で制球力が高い投手です。
2. 球種・投球割合
七色の変化球
左は年別、右は日別の投球割合で、色が球種を表しています。
持ち球はストレート、ツーシーム、スプリット、カットボール、チェンジアップ、スライダー、カーブの7球種です。
2021年の球種割合は日本にいた2020年からほとんど変わっていません。
日別の球種割合を見ると、「ストレートが多い日は打たれた」などの球種割合と成績には関係が無さそうです。
右にスライダーとスプリット、左にカットボールとチェンジアップ
2021年の左右別投球割合で、色が球種を表しています。
左右共に特定の球種の割合が高くはなっていません。
ただ、右打者にスライダーとスプリット、左打者にカットボールとチェンジアップの投球割合が多くなっています。
右にはスプリット、左にはチェンジアップが決め球
右にはスプリット、左にはチェンジアップが決め球として使用されています。また、左右ともスライダーがその次の決め球に使用しています。
スライダーで右打者から三振が獲れていない
右打者には決め球でスライダーを28%も投球しているにも関わらず、奪三振の88%はスプリットが占めています。このことから右打者からスライダーで三振が獲れていないと言えます。
3. 各成績
初球×
2021年は初球に打率.474、3本塁打と非常に打たれました。1-0、2-1、3-1などボールが先行した時の被打率はそれほど悪くありません。
フライボーラー
上図は各球種、全体、メジャー平均の被打球種類です。
フライ率31%とかなりのフライボーラーです。
球種別でもツーシーム以外はフライ率が高めです。
対左打者が得意
対左打者の被打率.250、被OPS.858と、左打者の方が得意としています。ただし、奪三振は右打者の方が多く奪っています。
得点圏でも変わらず
得点圏では被打率.289、被長打率.579と、被打率は少し上がりますが、被長打率は少し下がります。あまり得点圏でも差がありません。
決め球のスプリットとチェンジアップは優秀
上はOPSのグラフ、下は球種別の成績です。
決め球のスプリット(被打率.174)とチェンジアップ(被打率.150)と優秀です。
また右にはツーシーム(被打率.231)、左にはカットボール(被打率.235)とスライダー(被打率.111)の食い込む方向の成績が良いです。
4. リリースポイント
リリース位置が体から約30cm離れていて、約10cm球持ちが良い
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均のリリースポイントです。
MLB平均よりリリース位置が体から約30cm離れていて、約10cm球持ちが良いです。
5. 球速と回転数
平均球速146.9km/h、2158回転
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
全球種、MLB平均より平均球速が約5km/h遅く、回転数が100~300回転少ないです。
ストレートの平均球速は146.9km/h、回転数は2158回転です。
日別平均球速・平均回転数
上図は2021年の登板日別の平均球速・平均回転数です。
開幕3試合は平均球速が148km/h以上と球速が出ており、成績も良かったです。しかし、4月25日は143.4km/hまで球速が低下して、その後は146~147km/h前後でした。
回転数は最初と最後の試合以外は2100回転前後と安定しており、粘着物質の取り締まり強化がされた6月21日以降も変化が見られません。このことから、粘着物質の取り締まり強化の影響は無いと考えられます。
回別平均球速
初回は146.7km/h出ており、尻上がりに球速が上昇して5回は148.1km/hまで上がります。しかし、6回は144.4km/hまで急低下しており、スタミナには少し不安があります。
6. 回転軸と変化量
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、△はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
チェンジアップはスプリット並の落差
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートは回転軸がシュート方向に傾いており、横変化量-25cmと大きく、シュート回転するボールです。
ツーシームはホップ成分が29cmもあり、シュートに近いボールです。
スプリットは横変化量が-23cmとシュート成分が少なく、ストレートから真下に落ちるボールです。
カットボールは回転軸がストレートに近く、横変化量がほとんど無く、ホップ成分が多いハードカッターです。
チェンジアップはMLB平均より7cmも落ちて、スプリット並に落ちるボールです。
スライダーとカーブはMLB平均くらいの変化量です。
7. コース別
真ん中付近に集まっている球種は打たれている
成績の悪いストレートとカットボールは真ん中付近にボールが集まっています。
一方、成績の良いツーシーム、スプリット、チェンジアップはコーナーに集まっています。
右はインハイとアウトロー、左はアウトハイとインロー
右打者にはインハイとアウトロー、左打者にはアウトハイとインロー付近の成績が良いです。
左右共にアウトローのボールゾーンは成績が良いですが、そこまで打数が増えていません。3失点以下の試合はこのアウトローのボールゾーンを振ってもらえていますが、5失点以上の試合はほとんど振ってもらえていませんでした。
8. 軌道
カットボール、スライダーの軌道が離れている
カーブのリリース位置が違うことは多いですが、有原航平投手はカットボールとスライダーのリリース位置と軌道がストレートと異なります。もしかしたら、これでカットボールとスライダーを見極められてしまっているのかもしれません。
一方、ストレートとツーシームとスプリットとチェンジアップは軌道が非常に似ています。
まとめ
①開幕から4試合全て3失点以下(2試合無失点)
②球種(クセ)がバレている?
③七色の変化球
④右にはスプリット、左にはチェンジアップが決め球で優秀
⑤スライダーで右打者から三振が獲れていない
⑥初球×
⑦リリース位置が体から約30cm離れていて、約10cm球持ちが良い
⑧フライボーラー
⑨対左打者が得意
⑩平均球速146.9km/h、2158回転
⑪6回に球速が急低下
⑫ストレートはシュート回転
⑬チェンジアップはスプリット並の落差
⑭真ん中付近に集まっている球種は打たれている
⑮カットボール、スライダーの軌道が結構違う
今回は「【レンジャーズ】有原航平投手の2021年の投球分析」を紹介しました。
開幕から4試合全て3失点以下(2試合無失点)と安定した活躍を見せていましたが、急に3試合連続で5失点以上と打ち込まれました。そして、5月9日に右手中指の打撲で故障者リスト入りすると、右肩動脈瘤が発見されて手術を受けました。9月1日に復帰しましたが、9月15日に6失点と打ち込まれたことでDFA(戦力外)、マイナー契約になってメジャー1年目の2021年シーズンを終えました。
2021年の成績は防御率6.64、被打率.281、奪三振率5.3、与四死球率3.8でした。
有原航平投手の特徴としては、「変化球が多彩」「与四死球が少ない」「初球に打たれる」「フライボーラー」「対左打者が得意」「落ちるボールは優秀」などが挙げられます。
全球種がMLB平均より約5km/h遅く、回転数が100~300回転少ないです。ストレートは平均球速146.9km/h、2158回転のシュート回転です。
右打者にはスプリット、左打者にはチェンジアップが決め球として優秀で、変化量も落差があります。
カウント球のストレートとカットボールは真ん中付近に集まっていて打たれているので、カウント球の投球コースは特に意識した方が良さそうです。
また、「打たれた試合はアウトローのボールゾーンを見逃されている」「ストレートに比べてカットボール、スライダーの軌道が結構違う」ことなどから、クセがバレて打たれたのかもしれないので、カットボールとスライダーのフォームは修正した方が良さそうです
マイナー降格になりましたが、マイナーでアピールして、シーズン序盤には昇格して欲しいです。