第262回 【大谷翔平】6回1失点12Kで9勝目(2022年7月13日投球分析)
2022年7月13日、大谷翔平投手(28)が本拠地エンゼルス・スタジアムでのマーリンズ戦に「1番・投手兼DH」で投打同時出場。
6回を投げて105球、被安打5、四死球2、奪三振12、1失点の投球内容で9勝目。
4試合連続2桁奪三振は、ノーラン・ライアン投手以来の球団で史上2人目、日本人としても95年の野茂英雄投手以来の史上2人目の快挙です。
4回に5試合ぶりに自責点が付きましたが、ここまでで32イニング自責点0となり、球団記録と日本先発投手記録を更新しました。
打っては第2打席で右翼線へ2点三塁打を放ち、これがエンゼルスの先発投手では50年ぶりの三塁打となりました。
今回はそんな「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年7月13日投球分析」を紹介します。
データはBaseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
1. 球種・投球割合
スライダーを48%と多投
今回はストレート、フォーク、スラッター、スライダー、カーブの5球種を投球しました。
スライダーを48%と多投し、ストレートはわずか23%で、ツーシーム、スプリームは投げませんでした。
※当ブログでは「カットボールをスラッター」と「第二のスプリットをスプリーム」と呼称しています。詳細は過去記事を参照して下さい。
回別に見ると、4回にスラッターを多投して、5回はほぼスライダーで、ストレートを投げませんでした。
左にスラッター、カーブを多投
上は前回登板までの2022年平均、下は今回の左右投球割合です。
いつもより左右関係なくスライダーを多投し、左打者にはスラッターとカーブを多投しました。
2. コース
右打者はアウトコース中心
右打者はスライダーがアウトコースで空振りを量産しました。一方、ストレートはインコース寄りが多いです。
左打者は膝元を攻め、空振りを奪っています。
フォークは左右ともにストライクからボールになる球がなく、全く効果的に使えませんでした。
3. 各成績
極端なシフトで4安打
上図は今回、前回登板までの2022年平均、MLB右投手平均の左右別被OPSです。
左打者は膝元を攻めることで抑えました。
スタメンの7人が右打者で、前述通りスライダーで空振りを量産しましたが、4安打打たれました。ただ、4本とも極端なシフトだったためヒットになりましたが、通常シフトなら全て凡打性の当たりでした。
スライダーで空振り、見逃しを量産
今回は空振りが24個(前回21個)と、前回同様に空振りを多く取れました。
特にスライダーは前回同様に空振りが14個、見逃しが13個と驚異的な数字です。
ただ、フォークが空振り0個と、全く効果的に使えませんでした。
全体としてもストライク率66%(前回63%)、ゾーン内率55%(前回47%)とゾーン内で勝負出来てました。
4. リリースポイント
スラッター、スライダー、カーブのリリース位置が変化
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。◇は2022年平均、△はMLB平均です。
ストレートはいつも通りのリリース位置でしたが、スラッター、スライダー、カーブは体から遠く、低いです。これがいつも以上の回転数と変化量を生んだ要因と考えられます。
一方、フォークはリリースが不安定です。
球持ちはいつもぐらいでした。
5. 球速と回転数
平均球速158.3km/h、最高161.9km/h
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、◇は2022年平均、△はMLB平均を表しています。
ストレートは平均球速158.3km/h、最高球速161.9km/h、回転数は2205回転でした。
いつもよりスライダー、カーブの回転数が多いです。
カーブはスローカーブを投げず、球速が速く回転数が多いパワーカーブのみでした。
今季の中では球速は速く、回転数は平均的
ストレートは平均球速158.3km/hで今季の中では2番目に速い方でした。回転数は2205回転と今季の中では平均的でした。
6回は平均160km/h超え
尻上がりに球速が上昇して、6回は平均160km/h超えと球速が出ていました。
6. 回転軸と変化量
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、◇は2022年、点線はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
フォークは変化量が不安定
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、◇は2022年、△はMLB平均を表しています。
ストレートは真っスラが少なく、ホップ量が多かったです。
フォークは変化量が不安定。リリース位置が他球種の影響を受けて安定しなかったためと考えられます。
スラッターは縦変化量の成分が少なく、落差が大きいです。
スライダーは横変化量が多い球が増加して、平均41cmと驚異的な数字です。
カーブは変化量が多い球が増加しています。
まとめ
①スライダーを48%と多投
②左打者にはスラッター、カーブも多投
③右のアウトコースのスライダーで空振りを量産
④空振りが24個(前回21個)
⑤スライダーで空振り14個、見逃し13個
⑥平均球速158.3km/h、2205回転
⑦最速161.9km/h
⑧フォークのリリース位置と変化量が不安定で空振り0個
⑨ストレートのホップ量が大きい
今回は「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年7月13日投球分析」を紹介しました。
6回を投げて105球、被安打5、四死球2、奪三振12、1失点の投球内容で9勝目。
ストレートはいつも通りのリリース位置でしたが、スラッター、スライダー、カーブは体から遠く、低いです。これがいつも以上の回転数と変化量を生んだ要因と考えられます。
そのためスライダーは右のアウトコースで空振りを量産し、左打者にはスラッターとカーブも多投して膝元を攻めました。
ストレートは平均球速158.3km/hと球威があり、尻上がりに球速が上昇して6回は平均160km/h超えと球速が出ていました。また真っスラが少なく、ホップ量も多かったです。
フォークは変化量が不安定で制球も悪かったです。これはリリース位置が他球種の影響を受けて安定しなかったためと考えられます。
次回登板では修正すると思うので、楽しみです。