第182回 【ソフトバンク】2022年新外国人タイラー・チャットウッド投手の投球分析
2022年1月5日、ソフトバンクはタイラー・チャットウッド投手(32)の獲得を発表しました。背番号は「12」。
そのため今回は「【ソフトバンク】2022年新外国人タイラー・チャットウッド投手の投球分析」を紹介します。
データはBaseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
基本情報
メジャー経験11年と実績十分
所属球団 | ロサンゼルス・エンゼルス (2011) コロラド・ロッキーズ (2012 – 2017) シカゴ・カブス (2018 – 2020) トロント・ブルージェイズ (2021) サンフランシスコ・ジャイアンツ (2021) |
ポジション | 先発、リリーフ |
投打 | 右投右打 |
生年月日 | 1989年12月16日(32歳) |
身長 | 182.9 cm |
体重 | 83.9 kg |
2018年、2021年は与四死球が異常に多い
上はメジャー、下は3Aの年度別の成績です。
2018年までは先発でしたが、2019年と2021年はリリーフに転向しました。
MLB通算で防御率4.45、被打率.264とまずまずの成績を残しています。
2018年と2021年は与四死球が非常に多く、2018年はMLB最多の与四死球を投げたことで「荒れ球」で有名です。しかし、それ以外の年は与四死球率はそこまで高くないです。一方、奪三振率は近年上昇傾向です。
2020年からツーシーム、カットボールを多投
上図は年別投球割合で、色が球種を表しています。
持ち球はストレート、ツーシーム、カットボール、チェンジアップ、カーブの5球種です。
2020年からツーシームとカットボールが増加して、ストレートの割合が8%まで減少しています。
右にカットボール、左にツーシーム
上図は右打者、左打者別の投球割合で、色が球種を表しています。
右打者にはカットボール48%、左打者にはツーシーム57%と、投球割合が多いです。
チェンジアップ、カーブも左打者の方が投球割合が多いです。
ボールが先行するとツーシーム
上図は左がカウント別成績、右が状況別投球割合です。
初球やボールが先行するとツーシームが増えます。カットボールは決め球に投じられることが多いです。
カウント別の成績を見ると、0ストライクでの成績が悪いです。
リリースは体に近く、低く、球持ちが悪い
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均です。
MLB平均よりもリリースポイントが約15cm体に近く、約10cm低いです。また球持ちも約10cm悪いです。
被本塁打が少ないグラウンドボーラー
上図は各球種、全体、メジャー平均の被打球種類です。
フライ率15%と低く、ゴロ率50%と高く、被本塁打が少ないグラウンドボーラーです。
球種別ではストレートだけがゴロ率22%と悪いです。
対左打者×
2021年の対左打者の被打率.244、被OPS.715と苦手としています。MLB通算でも対左打者の被打率.286、被OPS.814と対右打者よりも悪いです。
対ピンチ×
2021年の得点圏の被打率.366、被OPS1.030と対ピンチをかなり苦手としています。
変化球の成績は優秀
上はOPSのグラフ、下は球種別の成績です。
変化球の被打率と被OPSがかなり優秀です。
ツーシームは対左打者、カットボールは対右打者の成績が特に優秀です。
チェンジアップ、カーブは対左打者の被打率.000で、三振も奪えています。そのため対左打者の決め球として、もう少し投球数を増やしても良いと思います。
平均球速154.1km/h、2387回転
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートは平均球速154.1km/h、2387回転と、MLB平均より速く、回転数が多いボールです。
他の球種も同様にMLB平均より速く、回転数が多いです。
チェンジアップは6月20日以降は明らかに回転数が落ちており、後述する変化量から6月20日以降はスプリットを投げていたと考えられます。
カーブも8月18日以降は明らかに回転数が落ちており、後述する変化量から8月18日以降はスライダーを投げていたと考えられます。
リリーフ時は2~3km/h上昇
上図は年度別の平均球速と回転数の推移です。
主にリリーフ登板していた2019年と2021年に平均球速が2~3km/h上昇しており、リリーフ時の方が球速が速い投手です。ただ、先発でも平均150~153km/hは出ているので、NPBでは先発トップクラスの球速になります。
回転数は2021年に100回転近く減少していますが、これは粘着性物質規制の影響と考えられます。日本のボールが合えば回転数が上昇しそうです。
ツーシームはシュート、カットボールは縦変化量が大きい
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、△はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
変化量
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートは真っスラタイプですが、変化量が不安定でホップ成分が少ないことが多いです。
ツーシームはMLB平均よりホップ成分が約5cm多く、シュートのようなボールです。
カットボールはMLB平均よりホップ成分が約20cm少なく、縦に大きく沈むボールです。
チェンジアップは6月20日まではMLB平均くらいの変化量でした。6月20日からは回転数が少なくなって、シュート成分が少なく、落差が大きいスプリットです。
カーブは8月18日まではMLB平均よりもドロップ成分が大きい縦に落ちるカーブでした。8月18日からは横変化量が大きいスライダーのようなボールです。
高めは少なく、ボール率が高い
上図は球種別のヒートマップで、色が濃い所が投球数が多いことを表しています。
全体的に高めが少なく、ボール率が高いです。
対右打者のツーシーム、対左打者のカットボールは真ん中付近に集まっており、これが成績悪化の一因だと考えられます。
コースに投げられれば打たれない
当たり前ですが、真ん中付近が打たれています。
対右打者にはアウトローとインハイ、対左打者にはアウトハイとインローに投げられれば打たれていません。
ストレートと曲がり球の軌道が似ている
ストレートとカットボールとカーブの軌道が似ています。
このことから、もう少しストレートを高めに集められるとカットボールとカーブも活きてきそうです。
まとめ
①主に先発、2019年と2021年はリリーフ
②2018年と2021年は与四死球がかなり多い
③持ち球は5球種
④2020年からツーシームとカットボールが増加
⑤リリースポイントが約15cm体に近く、約10cm低く、球持ちが約10cm悪い
⑥被本塁打が少ないグラウンドボーラー
⑦対左打者×
⑧対ピンチ×
⑨変化球の成績が優秀
⑩平均球速154.1km/h、2387回転
⑪ツーシームはシュート
⑫カットボールは縦変化が大きい
⑬チェンジアップが6月20日からはスプリット?
⑭カーブが8月18日からは横スライダー?
今回は「【ソフトバンク】2022年新外国人タイラー・チャットウッド投手の投球分析」を紹介しました。
2018年までは先発でしたが、2019年と2021年はリリーフに転向したメジャー経験豊富な投手です。MLB通算で防御率4.45、被打率.264とまずまずの成績を残しています。
2018年と2021年は与四死球が非常に多く、2018年はMLB最多の与四死球を投げたことで「荒れ球」で有名です。しかし、それ以外の年は与四死球率はそこまで高くないです。一方、奪三振率は近年上昇傾向です。
持ち球はストレート、ツーシーム、カットボール、チェンジアップ、カーブの5球種です。2020年からツーシームとカットボールが増加して、ストレートの割合が8%まで減少しています。
ストレートは平均球速154.1km/h、2387回転の真っスラタイプですが、変化量が不安定でホップ成分が少ないことが多いボールです。
ツーシームはMLB平均よりホップ成分が約5cm多いシュートのようなボールで、対左打者に有効です。
カットボールはMLB平均よりホップ成分が約20cm少なく、縦に大きく沈むボールで、対右打者に有効です。
チェンジアップは6月20日まではMLB平均くらいの変化量でしたが、6月20日からは回転数が少なくなって、シュート成分が少なく、落差の大きいスプリットです。
カーブは8月18日まではMLB平均よりもドロップ成分が大きい縦に落ちるカーブでしたが、8月18日からは横変化量が大きいスライダーのようなボールです。
平均球速が速くて、回転数が多く、変化球の成績が優秀な被本塁打が少ないグラウンドボーラーなので、日本のボールが合って、課題の制球力が改善されるとかなりの活躍が期待出来ます。
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