第192回 【プロ野球】勝利、得点、失点との相関係数ランキング
勝利に直結するのは得点を増やすこと?失点を減らすこと?を知りたくて、チーム成績を使って「勝利との相関係数ランキング」「得点との相関係数ランキング」「失点との相関係数ランキング」を算出しましたので紹介します。
使用するデータはスポナビライブとNPB.jp 日本野球機構の直近5年間(2017〜2021)のデータです。
0. 相関係数について
上図は相関係数の目安を表しています。
相関係数とは、二つの変量の関係を表す係数で、直線的な関係(比例関係)の強さを、1から-1の間の数で表します。1に近いほど「正の相関関係(比例)」が強く、-1に近いほど「負の相関関係(反比例)」が強くなります。
1. 勝利との相関ランキング
①まさかの失点とは相関無し
左は得点、右は失点と関係をグラフ化したものです。
勝利と「得点」は0.78と強い相関なのは予想通りですが、まさかの「失点」は-0.01と相関なしでした。つまり、得点が多いチームほど勝つが、失点が少なくても勝ち数が増えないと言えます。
左図から傾きが0.11なことから、得点が100点増えると11勝増える関係です。
②打撃項目が相関係数が高い
項目別に見ると、相関係数が高いのは打撃項目がほとんどです。
③得点圏では積極的に打ちにいく方が良い?
打撃項目の中でも「得点圏安打」が一番相関が強いです。
「得点圏打率」よりも高いことから、得点圏では四死球よりも積極的に打ちにいくチームほど勝利に結びついていると言えます。
④投手項目では「奪三振」が一番相関が強い
投手項目では「セーブ」と「奪三振」が相関が強いです。
「セーブ」は定義上、勝利しないとつかないことから相関があるのは当たり前ですが、防御率などよりも「奪三振」が勝利に結びついているのが意外でした。
理由として考えられるのは、「奪三振」だと守備のリズムが良く、攻撃に良い流れで繋がっているからかもしれません。
⑤走塁や繋ぎの意識も大事
「犠飛」「盗塁」「犠打」などは弱いながら相関があります。このことから、走塁や繋ぎの意識が強いチームの方が勝っていると言えます。
⑥「三振」はしても良い?
「三振」とは負の相関があります。つまり、三振が多いチームほど勝っているということです。
理由として考えられるのは、西武の山賊打線のように三振が多いチームは常に強く振っているので、その分長打も多くなっているからだと考えられます。
2. 得点との相関ランキング
①勝利と似た傾向
勝利と得点は強い相関があったので、全体的に似た傾向にあります。
②「犠打」では得点があまり増えない?
「犠打」は勝利とは0.29と弱い相関がありましたが、得点とは0.09と相関なしでした。このことから、「犠打は、得点は増えないが勝利には結びついている」と不思議な現象になっています。
③「UZR」は正、「失策数」は負
「UZR」は正、「失策数」は負の弱い相関があります。つまり、守備は上手いがエラーをする選手が多いチームほど得点を多く取っているということです。
3. 失点との相関ランキング
①「被安打」が一番強い相関
「被安打」が0.88と一番強い相関にあります。「与四球」「与死球」も相関はありますが、「被安打」に比べるとかなり弱いです。
②先発の方が重要
「先発防御率」が0.73と、「救援防御率」の0.54よりも強い相関があるので、失点を防ぐには救援陣よりも先発の方が重要と言えます。
③守備は「失策」が失点に繋がりやすい
「失策」が0.48と、「UZR」の0.27よりも相関が強いので、守備の項目の中でも「失策」が失点に繋がりやすいと言えます。
④「奪三振」が多くても失点が減らない
「奪三振」は勝利とは0.42と相関があり、得点とも0.29と弱い相関があります。しかし、何故か失点とは-0.08と相関なしでした。
このことから、「奪三振が多くても、失点は増えないが得点が増えて勝利には結びついている」という不思議な現象になっています。
4. 得失点の関係
上図は得点と失点の関係をグラフ化したものです。色は勝利数で、赤ほど勝利数が多いです。
得点が多いほど勝利数が多い(グラフの右側)ですが、失点が少なくても勝利数が多くはなっていません(グラフの下側)。また、得点と失点は比例しており、得点が多いチームは失点も多くなる傾向にあります。
上図は得点と失点の関係をチーム別にグラフ化したものです。数字は勝利数を表しています。
得失点の影響が特定のチームのせいかと思ってグラフを作成しましたがそのようなことはありませんでした。
やはり全体的に得点が多いと勝利数が多く、失点が少なくても勝利数が多くはなっていません。
まとめ
①「失点」と相関なし
②打撃項目が相関係数が高い
③得点圏では積極的に打ちにいく方が良い
④投手項目では「奪三振」が一番相関が強い
⑤「犠飛」「盗塁」「犠打」は弱い相関
⑥「三振」はしても良い
⑦特定のチームの影響では無い
今回はプロ野球直近5年間のチーム成績と「勝利、得点、失点との相関係数ランキング」を紹介しました。
最も意外だったのは「勝利」と「失点」に相関関係が無いことです。
このことから、相関係数的には勝つためにまず打撃を強化して、「三振しても良いから強く振る」「得点圏では積極的に打ちにいく」「犠飛や盗塁や犠打なども絡めて点を取りに行く」ことが大事みたいです。
また投手は「奪三振を多く取る」ことが重要で、失点は減りませんが何故か得点と勝利が増えます。
今回はただ相関係数を調べただけですが、色々と不思議なこともあって面白かったです。
ディスカッション
コメント一覧
負の相関がなんで右肩上がりのグラフになってるの?
数学的には「正の相関」だからです。
例えば失策など数字が増えると良くないものは意味的に「負の相関」と書きました。
ややこしくなってしまい申し訳ありません。
失点と勝利数の相関がないのは不思議です
気になって考えていたのですが、チーム間で得点のばらつきは大きい一方で失点のばらつきが小さい場合にそういうことが起きるような気がします
(データが少ないので上手く表現できないですが)
Aチーム:得900失501
Bチーム:得500失500
Cチーム:得100失499
のような場合は勝利数は得点と相関する一方、失点とはしなさそうです
コメントありがとうございます。
丁寧な説明で仰ることは分かりました。
ただ失点もそこそこバラツキがあるので、その影響は小さい気がします。
理由を推測とすると「①失点が少ないチームは守備重視しがち」「②得点力があるチームは大差で勝つことが多い」など複数の理由があるのかと思います。
「①失点が少ないチームは守備重視しがち」
これは今年の中日みたいなパターンです。投手力が高いため、野手も守備力が高い選手を集めて失点を防いでいます。しかし、守備を重視してしまって攻撃力は低くなり、得点が伸びないのではないかと。
「②得点力があるチームは大差で勝つことが多い」
大差の試合では勝ちパターン以外の投手が登板することが多いです。また点差があると「1点よりアウトを優先」することもあり、失点が増えるのかと。