第185回 【西武】2022年新外国人バーチ・スミス投手の投球分析
2022年1月18日、埼玉西武ライオンズがアスレチックスのバーチ・スミス投手(31)の入団が決定したことを発表しました。背番号は「54」となります。
そのため今回は「【西武】2022年新外国人バーチ・スミス投手の投球分析」を紹介します。
データはBaseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
基本情報
メジャーでは主にリリーフ
所属球団 | サンディエゴ・パドレス (2013) カンザスシティ・ロイヤルズ (2018) ミルウォーキー・ブルワーズ (2019) サンフランシスコ・ジャイアンツ (2019) オークランド・アスレチックス (2020 – 2021) |
ポジション | リリーフ、先発 |
投打 | 右投右打 |
生年月日 | 1990年4月12日(31歳) |
身長 | 193 cm |
体重 | 97.5 kg |
6月21日前後で奪三振率が激変
上はメジャー、下は3Aの年度別の成績です。
MLB通算成績は防御率6.03、被打率.278、奪三振率8.7、与四死球率4.4と被安打が多い投手です。
2021年成績は防御率5.40、被打率.280、奪三振率5.8、与四死球率2.5と奪三振と与四死球がかなり減りました。また被本塁打が5本と非常に少なかったです。
奪三振率が下がった要因は、2021年6月21日にMLBが粘着物質の規制を強化した影響と考えられます。6月21日以降はストレートの回転数が443回転減少して、ホップ成分が47cmから39cmになったことで、奪三振率が減少(7.7%→4.2%)しました。
持ち球は4球種
上図は年別投球割合で、色が球種を表しています。
持ち球はストレート、チェンジアップ、スライダー、カーブの4球種です。2019年まではツーシームも投げていましたが、2020年と2021年は投げていません。カーブは握りを見ると、ナックルカーブの可能性もあります。
投球の7割がストレート、約15%ずつがチェンジアップとカーブです。スライダーはほぼ投球しておらず、8月以降に14球だけ投球しました。
右にスライダーとカーブ、左にチェンジアップ
上図は右打者、左打者別の投球割合で、色が球種を表しています。
右打者にはスライダーとカーブの投球割合が増加し、左打者にはチェンジアップの投球割合が増加します。
ボールが先行するとストレートかチェンジアップ
上図は左右別のカウント別投球割合です。
ボールが先行するとほぼストレートかチェンジアップを投球しています。
カーブは初球と決め球で使用することが多いです。
初球×
初球が被打率.469(32-15)とかなり初球に打たれています。
リリースは体から遠くて低く、球持ち○
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均です。
MLB平均よりリリースポイントが体から約15cm遠くて、約10cm低いです。また球持ちは約15cm良いです。
フライボーラー
左は全体、右は各球種の被打球種類です。
フライ率28%とMLB平均より高いフライボーラーです。ただし、被本塁打は少ないです。
特に投球割合7割のストレートがゴロ率29%しかなく、フライ率34%と高いのが大きな要因です。
対左打者×
2021年の対左打者の被打率が.316、被OPS.899と打たれており、対左打者は苦手です。
対ピンチ×
2021年の得点圏の被打率.320、被OPS.912と打たれており、対ピンチに弱いです。
4球種ともそれなりの成績
上はOPSのグラフ、下は球種別の成績です。
ストレート、スライダー、カーブは対右打者のOPS.700以下と成績が良いです。
対左打者にはチェンジアップがOPS.700以下と成績が良いですが、他の球種はOPS.900を超えています。
6月21日以降は回転数が減少
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートの平均球速は150.4km/hで6月21日前後でほとんど変化がありませんでした。しかし、回転数は6月21日前後で443回転(2496→2053)も減少しました。
カーブも同様に回転数が6月21日前後で249回転(2567→2317)も減少しました。
チェンジアップは回転数が6月21日前後で144回転(1940→1797)も減少しましたが、球速は3.1km/h(130.5→133.6)もUPしました。
スライダーは8月から投げ始めたため、6月21日前後の影響は分かりませんが、MLB平均より回転数が少なくて遅いボールです。
近年、回転数が急に増加
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
2018年から2020年の間に回転数が391回転(2053→2444)も急に増加しています。
球速はリリーフ転向した2018年からは149km/h~152km/hとMLB平均くらいを推移しています。西武は先発を想定しているとのことですが、先発だった2013年は平均球速148.5km/hとそこまでリリーフに比べても球速が落ちていません。
ノビのあるストレート、来ない系チェンジアップ
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、△はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
変化量
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートは6月21日以前はホップ成分が47cmもあり、かなりノビのあるストレートです。しかし、6月21日以後はホップ成分が39cmとMLB平均以下にまで下がっています。
チェンジアップは、回転軸がかなりバックスピン寄りで、6月21日以前はホップ成分が38cmもあります。
球速はMLB平均以下にも関わらず、落ちずに真っ直ぐ来る球で、いわゆる「来ない系チェンジアップ」です。
スライダーはMLB平均より横変化が少ないボールです。
カーブはMLB平均よりも縦変化量が10cm大きく、縦に大きく落ちるカーブです。
ストレートは高め
上図は球種別のヒートマップで、色が濃い所が投球数が多いことを表しています。
ストレートは低めよりも高めに集まっています。リリースが低くて、ホップ成分が大きいので、高めに集めるのは良い傾向だと思います。
チェンジアップはストライク率37%と、ボール球が多いです。「来ない系チェンジアップ」なので出来るだけゾーン内に投げたいところです。
スライダーはアウトコースにしっかり投げられています。
カーブは右打者には低めに集まっていますが、左打者にはやや高めに集まっています。これが左打者に打たれている一因かもしれません。
インハイの成績が良い
右打者には「インハイ」と「アウトコース真ん中」の成績が良いです。
左打者には「インハイ」と「アウトハイ」の成績が良いですが、低めはかなり打たれています。
軌道は似ている
ピッチトンネルまでの全球種の軌道が似ています。
まとめ
①主にリリーフ
②6月21日前後で回転数が激変(2496→2053)
③6月21日以降は奪三振率が減少(7.7%→4.2%)
④持ち球は4球種
⑤右にスライダーとカーブ、左にチェンジアップ
⑥ボールが先行するとストレートかチェンジアップ
⑦初球×
⑧対左打者×
⑨対ピンチ×
⑩平均球速150.4km/h
⑪ノビのあるストレート(ホップ成分47cm)
⑫来ない系チェンジアップ
今回は「【西武】2022年新外国人バーチ・スミス投手の投球分析」を紹介しました。
MLB通算成績は防御率6.03、被打率.278、奪三振率8.7、与四死球率4.4と被安打が多いリリーフ投手です。
2021年成績は防御率5.40、被打率.280、奪三振率5.8、与四死球率2.5と奪三振と与四死球がかなり減りました。また被本塁打が5本と非常に少なかったです。
奪三振率が下がった要因は、2021年6月21日にMLBが粘着物質の規制を強化した影響と考えられます。6月21日以降はストレートの回転数が443回転減少して、ホップ成分が47cmから39cmになったことで、奪三振率が減少(7.7%→4.2%)しました。
平均球速は150.3km/hから150.5km.hとほとんど変化がありませんでした。
チェンジアップは回転軸がかなりバックスピン寄りでホップ成分が38cmもあります。そのため、球速が遅いのに落ちずに真っ直ぐ来る球で、いわゆる「来ない系チェンジアップ」です。ただ、ストライク率が37%と、ボール球が多いのが課題です。
カーブはMLB平均よりも縦変化量が10cm大きく、「縦に大きく落ちるカーブ」です。
粘着物質の規制強化前後でストレートの質が大きく異なることから、日本のボールが合うかどうかが活躍のカギになりそうです。日本のボールの方が滑らず、回転数が多くなるとよく言われているので、日本のボールが合って活躍することが期待出来そうです。
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