第218回 【澤村拓一】飛躍のカギはスライダー?(2021年投球分析)
レッドソックスの澤村拓一投手はメジャー1年目となる2021年は2度の負傷者リスト入りをしましたが、開幕からリリーフとして活躍しました。
今回はそんな「【レッドソックス】澤村拓一投手の2021年の投球分析」を紹介します。
スプリングトレーニングの投球分析はまた今度する予定
Baseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
1. 年度別成績
メジャー1年目としては十分な活躍
メジャー1年目の2021年は開幕からリリーフとして活躍していましたが、7月20日に右上腕三頭筋の炎症のため負傷者リスト入りをしました。
7月30日には復帰して問題なく登板していましたが、8月31日には新型コロナの感染が分かって、再度の負傷者リストを入り。その後、9月14日に復帰してレギュラーシーズンが終了。
優勝決定シリーズ初戦にはポストシーズン初登板を飾りますが、制球難で1/3回を2四死球1失点でした。登板後にダルビッシュ有投手らに話を聞いて、失敗に向き合えたとそうで、第3戦ではいきなりフォームをセットからノーワインドアップに変更しました。このフォーム変更が功を奏して、1回無安打無失点でした。
2021年の成績は55試合で防御率3.06、被打率.227、奪三振率10.4、与四死球率5.8でした。
澤村拓一投手の特徴としては、「球速が速い」「被打率が低い」「奪三振が多い」「四死球が多い」などが挙げられます。
2. 球種・投球割合
球種は3球種
左は年別、右は日別の投球割合で、色が球種を表しています。
2021年の持ち球はストレート、スプリット、スライダーの3球種のみでした。
日本時代に投げていたツーシーム、カットボール、カーブは一切投げませんでした。
スライダーは前半戦に日本時代より多く投げていましたが、後半戦は減って、9月17日からはまた投球数が増えました。
左はほぼストレートとスプリット
上は2020年、下は2021年の左右別投球割合で、色が球種を表しています。
右打者にはスライダーの割合が多く、その分左打者に比べるとスプリットの割合が減ります。
左打者にはほぼストレートとスプリットを半々投げています。
ボールが先行するとストレート増加
スプリットは決め球で主に使用していますが、カウント球としても使っています。
ただ、ボールが先行するとストレートの割合が増加しています。もう少しスライダーでカウントを取れるようになると投球が楽になりそうです。
奪三振の7割はスプリット
奪三振球種は左右共に約7割がスプリットです。スライダーではほとんど奪三振が獲れていません。
3. 各成績
初球○
初球の被打率が.200とあまり打たれていません。また0ストライクでも被打率.184と抑えており、本塁打も打たれていません。
そもそも打数も少ないので、制球に難があると相手に思われていて、あまり初球やボールが先行すると積極的に打ってこないためかもしれません。
グラウンドボーラー
上図は各球種、全体、メジャー平均の被打球種類です。
ゴロ率51%とMLB平均より高いグラウンドボーラーです。その要因としてはスプリットのゴロ率が73%と非常に高いためです。
MLBでは右打者も抑えている
左は2020年、右は2021年の対左右成績です。
NPB時代の課題は右打者で、2020年は被打率.279でした。
MLB移籍した2021年は右打者の被打率.231と向上して、左右の成績の差がありません。右打者を抑えれるようになった一因としてはスライダーの投球割合が多くなったことが考えられます。
対ピンチ○
得点圏被打率.143、被OPS.503と対ピンチに強いです。また2021年は得点圏で1本も本塁打を打たれませんでした。
決め球のスプリットは優秀
決め球のスプリットは被打率.202、被OPS.517であり、左右共に優秀な成績でした。
ストレートとスライダーは被打率自体はそこまで悪くはありませんが、本塁打などの長打が多く被OPSは高いです。
4. リリースポイント
3球種間のリリース位置が近い
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均のリリースポイントです。
MLB平均よりリリース位置が体から約5cm近く、低いです。球持ちは平均くらいです。また、MLB平均よりも3球種間のリリース位置が近いです。
5. 球速と回転数
平均球速154.6km/h、2115回転
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートは平均球速154.6km/h、2115回転と、MLB平均より3km/h速くて170回転少ないボールです。
スプリットは平均球速147.4km/hとMLB平均より9km/h速い、MLB2位の高速スプリットです。
スライダーはMLB平均より2.3km/h速くて140回転少ないボールです。
年々平均球速が上がっている
巨人に入団した2011年は平均145km/hでしたが、年々平均球速が上がって2021年は154.6km/hになりました。
粘着物質の取り締まり強化の影響は無い
上図は2021年の登板日別の平均球速・平均回転数です。
球速は4月は153km/h前後でしたが、5月以降は155km/h前後と球速が上がりました。ただ、後半戦は連投などの疲労が溜まると急に153km/hくらいまで落ちる日が多く見られました。
回転数は開幕時は2200回転前後でしたが、後半戦は2000~2100回転でした。ただし、粘着物質の取り締まり強化がされた6月21日以降に急激な変化は見られないので、粘着物質の取り締まり強化の影響は無いと考えられます。
6. 回転軸と変化量
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、△はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
スプリットは変化幅が広い
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートはシュート成分がやや多いシュートライズする球です。
スプリットは回転軸がバックスピン寄り、平均するとシュート成分が-18cmと少なく、ストレートの真下に落ちるようなボールです。ただ変化幅が横に40cm以上と非常に大きく、スライドする時もあれば、シュートする時もあるようなスプリットです。
スライダーはMLB平均より横変化量5cm、縦変化量10cm少ないです。
7. コース別
右打者にはインコース、左打者にはアウトコース
ストレートがシュートライズする特性を活かしてか、全球種が右打者にはインコース(左打者にはアウトコース)に集まっています。
スライダーは左打者へのボール率が高いので、思い切ってインコースに投げてみたら面白いかもしれません。
右にはインハイとアウトロー、左にはインローとアウトロー
全球種が右打者のインコースを中心に投球していますが、インローとインコース真ん中は結構打たれています。
アウトローの成績は良いので、やはりスライダーはもう少しアウトローに投げた方が良さそうです。
一方、左打者はアウトローとインローの成績が良いので、左打者はインローにスライダーを投げた方が良さそうです。
8. 軌道
ストレートとスプリットの軌道がかなり似ている
3球種ともピッチトンネルまでの軌道が似ていて、特にストレートとスプリットは手元までかなり近い軌道です。そのため打者はスプリットが手元でストンと落ちている感覚だと思われます。
まとめ
①防御率3.06、被打率.227、奪三振率10.4、与四死球率5.8
②3球種
③奪三振の7割はスプリット
④初球○(被打率.200)
⑤対ピンチ○(得点圏被打率.143、被OPS.503)
⑥スプリットは優秀(被打率.202、被OPS.517)
⑦平均球速154.6km/h、2115回転
⑧スプリットは平均球速147.4km/h(MLB2位)
⑨スプリットは変化幅が広い
⑩右打者にはインコース中心(左打者にはアウトコース)
⑪ストレートとスプリットの軌道がかなり似ている
今回は「【レッドソックス】澤村拓一投手の2021年の投球分析」を紹介しました。
メジャー1年目の2021年は2度の負傷者リスト入りがありましたが、開幕からリリーフとして活躍しました。
2021年の成績は55試合で防御率3.06、被打率.227、奪三振率10.4、与四死球率5.8でした。
澤村拓一投手の特徴としては、「球速が速い」「被打率が低い」「奪三振が多い」「四死球が多い」「初球○」「対ピンチ○」などが挙げられます。
ストレートは平均球速154.6km/h、2115回転でシュートライズする球です。
最大の武器のスプリットは平均球速147.4km/h(MLB2位)と高速で、シュート成分が-18cmと少なく、ストレートの真下に落ちるようなボールです。また、スライドする時もあれば、シュートする時もあるようなスプリットです。
スライダーはMLB平均より横変化量5cm、縦変化量10cm少なく、投球コースなど課題も多いボールです。ただ逆に言えば、まだ伸びしろが多い球とも言えます。
スライダーがもっとカウント球で使えるようになれば、与四死球も減って、さらに成績が向上する可能性もあります。
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