第259回 【巨人】2022年新外国人イアン・クロール投手の投球分析
2022年7月5日、巨人がパドレス傘下3Aエルパソを自由契約になったイアン・クロル投手(31)と今季の選手契約を結ぶことに合意したと発表した。背番号は「65」で、推定年俸3500万円。
クロル投手は2013年からMLB通算243試合に登板、8勝6敗、1セーブ26ホールドで防御率4.49を記録したMLB実績十分なリリーフ左腕です。
今回はそんな「【巨人】2022年新外国人イアン・クロル投手の投球分析」を紹介します。
Baseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
つづりはKrolで、「クロール」「クロル」などの表記がされますが、当ブログでは「クロル」で記述します。
1. 基本情報
MLBの登板経験は豊富
所属球団 | ワシントン・ナショナルズ (2013) デトロイト・タイガース (2014 – 2015) アトランタ・ブレーブス (2016 – 2017) ロサンゼルス・エンゼルス (2018) デトロイト・タイガース (2021) |
ポジション | リリーフ |
投打 | 左投左打 |
生年月日 | 1991年5月9日(31歳) |
身長 | 185.4 cm |
体重 | 95.3 kg |
奪三振率、被打率が高い
2022年の今季は3Aで24試合に登板し、1勝1敗、6セーブ2ホールド、防御率7.46と打たれています。
MLB通算では8勝6敗、1セーブ26H、防御率4.49、被打率.276、奪三振率8.5、与四死球率4.0です。
投手として特徴は「左投手としては球速が速い」「回転数が多いストレート」「奪三振が多い」「被打率が高い」などがあげられます。
2. 球種・投球割合
持ち球は5球種
年別の投球割合で、色が球種を表しています。
持ち球はストレート、ツーシーム、チェンジアップ、スライダー、カーブの5球種です。
年々ストレートの投球割合が減少しており、直近の2021年はストレートが19%しかなく、5球種をバランス良く投球しています。
チェンジアップはほぼ右打者のみ
2021年の左右別投球割合で、色が球種を表しています。
チェンジアップはほぼ右打者のみにしか投球しておらず、左打者にはその分スライダーの割合が増えます。
ボールが先行するとスライダー
右打者には5球種をバランスよく決め球に使用しています。
左右ともにボールが先行するとスライダーの割合が増えています。このことからスライダーが一番制球に自信があるみたいです。
3. コース
高めに抜け球が多い
ストレート、ツーシーム、スライダーは高めに抜け球が多いです
どの球種も際どいコースへの投球が少ないことから、細かいコントロールはあまり無さそうです。
左右ともにアウトロー〇
左右ともにインハイとアウトローの成績が良いです。また、ベースの左下のボールゾーンを多く振らせていることが分かります。
4. 各成績
左右差はあまり無い
右打者の方が被打率が低いですが、長打は打たれているので被OPSは高いです。
ピンチに弱い
得点圏の被打率.313、被OPS.912と高く、対ピンチに弱いです。
1ストライク×
1ストライクでの被打率がかなり高いです。またボール先行でも打たれているので、カウントを取りにいったところを打たれている傾向が強いです。
グラウンドボーラー
上図は球種ごとの被打球種類比率です。
ゴロ率が48%とMLB平均より高いことからグラウンドボーラーと言えます。
特にツーシーム、スライダーがその傾向が強いです。
スライダーが優秀
左はOPSのグラフ、右は空振り率などのグラフ、下は球種別の成績です。
投球割合が多いスライダーは左右ともに被OPSが低く、空振り率が高いです。ただし、左打者の被打率は少し高めです。
カーブは右打者への被打率と被OPSが低いです。
一方、ストレートとツーシームは左右ともに被打率や被OPSが高いです。この2球種はゾーン内率が高い球種なので、ゾーン内で勝負するためには改善が必要です。
5. リリースポイント
リリース位置が体から遠く、球持ちが悪い
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均のリリースポイントです。
MLB平均よりリリースは約10cm体から遠いです。
球持ちは約20cm悪いです。
6. 球速と回転数
平均球速150.8km/h、最高153.5km/h
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートの平均球速は150.8km/hでMLB平均(149.4km/h)よりも速く、全球がNPB平均よりも速かったです。回転数も2381回転と回転数が多いです。
ツーシームも同様の傾向で平均球速151.2km/hで2305回転と回転数が多いです。
チェンジアップはMLB平均より速く、回転数はMLB平均くらいです。
スライダーとカーブもMLB平均より速く、回転数が多いです。スライダーはMLB平均のカットボールに近い球速で、後述する変化量からもほぼ回転数が多いカットボールです。
平均150km/h前後は期待出来る
2013年からずっと平均球速は150km/h前後で直近の2021年も球速低下は見られません。
回転数も2400回転前後をキープしています。
7. 変化量
スライダーはほぼカットボール
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートは縦変化量が42cmとMLB平均くらいですが、シュートライズのボールがやや多いです。2021年以前はこのシュートライズの球がもっと多かったです。
ツーシームはシュート系で、落差が小さくてシュート成分が多いです。
チェンジアップは落差が大きいです。
スライダーはMLB平均のカットボールに近い変化量で、球速や回転軸も考慮するとほぼカットボールです。
カーブは2018年まではMLB平均くらいでしたが、2021年は縦変化量が大きいです。
8. 軌道
まとめ
①MLB通算防御率4.49
②奪三振率が高い
③被打率が高い
④持ち球は5球種
⑤チェンジアップは右打者のみ
⑥高めに抜け球が多い
⑦アウトロー〇
⑧ピンチに弱い
⑨グラウンドボーラー
⑩リリース位置が体から遠く、球持ちが悪い
⑪平均球速150.8km/h、最高153.5km/h
⑫ストレートは回転数が多く、シュートライズ系
⑬ツーシームはシュート系
⑭チェンジアップは落差が大きい
⑮スライダーはほぼカットボール
⑯カーブは縦変化量が大きい
今回は「【巨人】2022年新外国人イアン・クロル投手の投球分析」を紹介しました。
MLB通算では8勝6敗、1セーブ26H、防御率4.49、被打率.276、奪三振率8.5、与四死球率4.0を記録したMLB実績十分なリリーフ左腕です。
投手として特徴は「左投手としては球速が速い」「回転数が多いストレート」「奪三振が多い」「被打率が高い」などがあげられます。
ストレートは平均球速は150.8km/hでMLB平均よりも速く、回転数も2381回転と回転数が多いです。
投球数が多いスライダーはMLB平均のカットボールに近い変化量で、球速や回転軸も考慮するとほぼカットボールです。
最大の課題は「コースに投げ分ける制球力」で、特にストレートとツーシームを左打者のインコースに投げることが出来るかがNPBでの活躍の鍵になりそうです。