第21回 【メジャー(MLB)左投手】軌道シミュレーション
前回からの続きで2020年のメジャー(MLB)左投手のトラックマンデータの解析結果を紹介したいと思います。
分量が多いので数回に分けて紹介します。今回は「軌道シミュレーション」です。
元データはBaseball Savantで、右投手については過去記事を参考にして下さい。
第12回 メジャー(MLB)右投手の軌道シミュレーション
1. 前置き
ピッチトンネル
ピッチトンネルを簡単に言うと、投手がバッターに投球する際にある地点(ピッチトンネル)を通してから変化させると打者が対応しにくくなるという理論です。
今回はピッチトンネルのことも考えて、トンネルポイントまでの図も作成しました。
投球がホームプレート前面に到達する0.175秒前をトンネルポイントとして定義。
ピッチトンネルの詳細については、下記のサイトを参照して下さい。
ピッチトンネルについての先行研究
Baseball Prospectusのピッチトンネルの紹介記事
ストライクゾーンの定義
公認野球規則では、「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。
このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである。」
と定義されています。
つまり、ストライクゾーンの高さは打者の構えによって1球ずつ変わります。
今回はストライクゾーンの高さを下40cm~上100cmで図を作りました。
2020年の全投球から平均を取ると下48.5cm~上102cmだったので、少しずれていることはご容赦下さい。
2. 軌道
まずはシミュレーションの前に軌道のグラフです。
今回の軌道の計算式は下記のサイトを参考にして、入力する初期値などはアレンジしました。
エクセルで野球ボールの軌道計算
全球種
「三塁側から見た軌道」と「上から見た軌道」も作りましたが、球種の違いがよく分かりません。
ピッチトンネルの図を見ると、トンネルポイントで速い球種と遅い球種では差異が大きい。
球種が多く、見にくいので速い球種と遅い球種で分けました。
速い球種
ツーシーム、スプリット、チェンジアップはほぼ同じ軌道。
トンネルポイントでは、右投手に比べるとストレートとは少し差異がある。
遅い球種
遅い球種は全体的にトンネルポイントでストレートから遠いので見分けやすい。
ただ、3球種の軌道は似ているので見分けにくい。
スライダーはそこまで曲がっていない。
3. 軌道シミュレーション
0.02秒/1コマでメジャー(MLB)右投手の軌道シミュレーションで作成。
下はストレートのトンネルポイント地点の時間で一時停止したものである。
ストレートで止めているので、他の球種は実際のトンネルポイントとは差異がある点に注意。
4. まとめ
今回は2020年のメジャー(MLB)投手のトラックマンデータの解析結果として、
「メジャー(MLB)左投手の軌道シミュレーション」を紹介しました。
・ツーシーム、スプリットはツーシームと同じ軌道
・トンネルポイントでは、右投手に比べるとストレートから速い球種も少し遠い
・トンネルポイントで差異があるので、遅い球種はストレートとは見分けやすい
・遅い球種同士の軌道は似ているので見分けにくい
・スライダーはそこまで曲がっていない
次回は「メジャー(MLB)左投手のリスク管理・打球の種類比率」を紹介する予定です。