第57回 【前田健太】2021年スプリングトレーニングの投球分析
3. 球速・回転数
球速、回転数で2020年と差があるのは、ツーシームとカーブです。
2020年よりツーシームは2km/h以上遅いです。これはストレートよりも軌道が近いチェンジアップに偽装することが意図ではないかと思います。
2020年よりカーブも6km/h以上遅いです。速いカーブは空振り率が上がって、被打率が下がるので決め球に使用されます。一方、遅いカーブは見逃し率が上がり、カウント球に使用されます。前田投手の場合は、他に三振が獲れる球種が複数あるので、カーブは遅くして、カウント球に使用する意図だと思います。また、遅いカーブは緩急を生むので、次の球を活かすメリットもあります。
「スライダーは速く縦に変化するか、遅く横に変化する方が良い」とかね
4. リリースポイント
2020年よりリリースポイントが3~5cm頭寄りになり、5~10cm高くなっています。またエクステンションも3~5cm短くなっています。
5. 変化量
ストレートは2020年よりもホップ成分が3cmほど増している。球速、回転数は変わっていないことから、もしかしたらリリースポイントの変化が影響しているのかもしれません。一般的にリリースポイントが頭寄りに高い方が、回転軸が地面に水平に近づきやすく、ストレートのホップ成分が増える傾向にあるからです。
スライダーは2020年よりも変化が小さくなり、去年のカットボールぐらいの変化です。これはもしかしたら、前田投手はカットボールを投げていて、スライダーと判定されている可能性があります。そもそも前田投手はスライダーを①カット気味、②斜め(マエケンスライダー)、③縦の3種類を投げており、①のカット気味のスライダーが2020年はカットボールと判定されていて、今年はスライダーと判定されている可能性はあります。
チェンジアップは2020年よりも縦に8cm沈んでいない。これはもしかしたらリリースポイントの変化の影響で沈んでいない可能性、ツーシームに偽装するためツーシームに変化を近づけている可能性が考えられます。前者だと左打者から三振を奪いにくくなってしまいます。後者で偽装するならツーシームを沈めた方が良いと思うので、前者の可能性が高いです。
カーブは球速が遅くなった分、変化量が増えています。