第99回 【大谷翔平】自己最低球速でもホップ成分増加(2021年5月19日投球分析)
現地時間5月19日(日本時間20日)のインディアンス戦に、投打のリアル二刀流の「2番投手」で出場し、投手としては4回2/3回5安打2失点5奪三振2四球、打者としては3打数1安打でした。また5回途中からと6回は投手から右翼の守備にもつきました。
この試合、右翼の守備についたことよりも話題になったのが大谷投手の球速で、140km/h台のストレートを連発しました。そのため試合中からネットでは「故障したのでは?」と不安がる声が聞かれましたが、試合後に本人が故障を否定したので一安心です。
今回はそんな「大谷翔平投手の2021年5月19日投球分析」を紹介します。
データはBaseball Savantを使用します。過去の投球分析については下記を参照して下さい。
1. 球速は自己最低球速を7.2km/hも更新
前回登板までは平均155.4km/hだったストレートが、5月19日は平均146.9km/hと普段より8.5km/hも遅かったです。最高球速も153.4km/hしか出ませんでした。
ちなみに5月19日の最低球速は136.3km/hでした。これはメジャー移籍後最低だった2020年の143.5km/hを7.2km/hも更新したことになります。
2. 初回から3回までは145km/h前後
ストレートは3回までは145km/h前後で、4回と5回は150km/h前後にまで回復してます。
故障した時は終盤に球速が落ちたので、やはり今回は故障では無さそうです。
3. 本人は「故障ではない」と発言
下記は試合後の大谷投手のインタビューで、「故障ではない」と本人は語っています。
原因としては、「疲労」と「トミー・ジョン手術の後遺症」が考えられそうです。
記者「球速が出ていなかった。」
大谷投手「真っすぐがいかないなという感じでしたね。その代わりにカットが良かったので、多めに投げただけかと思います」記者「故障の心配は。」
大谷投手「ないと思いますね。そのまま打ってましたし。単純に体が動かなかったなという感じだと思います」記者「もっと休みが必要か。」
大谷投手「普通にやっていても、そういう日、そういう登板もありますし。逆に言えば、そういう登板の時にどういう投球ができるかが大事になってくる。欲を言えば、もう1、2イニングを投げて、中継ぎの負担を減らせられれば良かったなと思います」記者「フォーシームの球速低下には自分でも驚いたか。ブルペンからだったか。」
大谷投手「いかないと思いましたけど、無理やり出しにいく方法もあれば、今日みたいに打たせることにシフトすることもある。今日は後者だっただけかなと思います」記者「カットボール習得の理由は真っすぐがいかない日に使えるからか。」
大谷投手「それもありますし、単純に前回みたいに真っすぐを多めに投げた次の試合というのは、どうしても相手チームは真っすぐを狙ってきたりするので。そこで1球で終わればこちらも楽ですし。そういう意味の球種でもありますね」記者「トミー・ジョン手術後から、こういう体の重さ、直球がいかないなどを感じる日があったか。」
試合後のインタビューより引用
大谷投手「そうですね。それは一進一退というか、段階を追って80マイルから90マイルに上がる時もそうですし、90マイルから95マイルに上がる時もそうです。強く投げる強度がもちろん高くなれば、張りが出てきたりとか。そういうところだと思うので。去年も試合にそんなに投げているわけではないですし、これからそういう張りがもちろんでてくることもあると思うので、そういう時に臨機応変に対応できたらなと思います」
4. スラッターを多投、カーブは投げなかった
上図の左は前回まで、右は5月19日の投球割合です。
先ほどのインタビューでも語っていたように球速が出ない分、スラッターを多投しました。スラッターの意図としては空振りを獲ることではなく、打たせて取ることみたいです。
あとカーブは一球も投げませんでした。
5. スラッターで投球数を抑えられていた
上図は5月19日の回別投球数です。
2回からスラッターを多投しましたが、劇的に球数が少なっています。スラッターの意図通りの結果です。
6. リリースポイントがオーバー気味に変化
上図は「2018年の平均」、「前回までの登板の2021年の平均」、「5月19日」のリリースポイントです。
5月19日は全体的に頭に近く、高くなっていて、よりオーバー気味に変化しています。このことによって、ストレートがよりホップしやすくなったと考えられます。
「リリースポイントがオーバー気味だとホップしやすくなる」ことについては以前書きましたので、下記を参照して下さい。
7. 全体的に打たれる
被打率が前回までと比べると全体的に高くなっています。ただし、スラッターについては下がっています。
打たせて取る投球スタイルでは、ある程度は被打率が上昇するのは仕方ないのかもしれません。
8. ストレートのホップ成分がメジャートップレベル
上図は「2018年の平均」、「前回までの登板の2021年の平均」、「5月19日」の変化量です。
5月19日は球速が遅いにも関わらず、ストレートのホップ成分が約5cmも増加していました。中にはホップ成分が約55cmとメジャートップレベルの球もありました。
フォークは10cmもホップ成分が多く、いつもより落ちが悪かったです。それでも他の投手よりは落差があるので問題は無かったように思います。
9. 軌道
5月19日の全球種の軌道です。
スラッターがスライダーとストレートの中間の軌道で、どちらにも軌道が近く、偽装出来ていたと思います。
10. まとめ
①最低球速は136.3km/hで、自己最低を7.2km/hも更新
②本人は「故障ではない」と発言
③スラッターを多投
④球数を減らすのにスラッターは効果的
⑤リリースがオーバー気味に変化
⑥ストレートのホップ成分増加
今回は「大谷翔平投手の2021年5月19日投球分析」を紹介しました。
最低球速は136.3km/hで、メジャー自己最低を7.2km/hも更新しました。本人は「故障ではない」と発言しており、「疲労」と「トミー・ジョン手術の後遺症」が考えられそうです。
球速が出ないので、スラッターを多投して打たせて取るスタイルで投球数を抑えることは出来ました。
球速は出てませんでしたが、ストレートのホップ成分は増加していました。
今回のように打たせて取るスタイルか、いつもの三振を獲るスタイルか、次回登板が楽しみです。
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