第118回 【大谷翔平】スラッター、カーブが効果的(2021年7月6日投球分析)
現地時間7月6日(日本時間7日)に本拠地でのレッドソックス戦に出場、投打のリアル二刀流の「2番投手」で先発しました。
投手としては7回5安打2失点、5奪三振無四球と好投し、日米通算50勝目となる今季4勝目。89球無四球と打たせて取る安定した投球でしたが、6回に味方の“ホームランキャッチ”にも助けられる場面もありました。
打者としては4打数1安打1打点で、外野の守備にはつかずにベンチに下がりました。
今回はそんな「大谷翔平投手の2021年7月6日投球分析」を紹介します。
データはBaseball Savantを使用します。過去の投球分析については下記を参照して下さい。
1. スライダーを減らした分、スラッターとカーブを多投
日別投球割合(2021年)
上図は2021年の登板日別の投球割合です。
前回に比べるとスライダーを減らした分、スラッターとカーブを多投しました。
左右別投球割合
上図は7月6日の左右別の投球割合です。
今回はかなり左右で投球割合が違いました。
右打者にはストレート、スラッター、スライダーの3球種を主に投球しました。
左打者にはストレート、フォーク、カーブの3球種のみでした。
回別投球割合
試合を通じてバランス良く投げています。ただ疲れが見えてきた7回はストレートの投球割合が減りました。
2. 球速は回復傾向
球速・回転数
7月6日のストレートは平均154.1km/h、最高球速158.5km/hでした。
スラッターが今年の平均より3km/h速く、ストレートに近い球速でした。よりストレートとの見極めがしにくくなっていて、良い兆候だと思います。
カーブはいつもより明らかに遅い球が3球ありました。このカーブとストレートとの球速差は最大50km/hにもなり、これはメジャーでもトップの球速差です。
全体的に回転数は少なめでした。
回別平均球速
ストレートの球速は7回まで安定していました。
ただ7回は疲れの影響か、スラッターなど全体的に球速が落ちています。
日別平均球速
上図は2021年の登板日別の平均球速です。
今回も球速が急に減速した5月19日からは回復傾向です。
日別平均回転数(2021年)
全球種の登板日別の平均回転数です。
全球種が緩やかに回転数が減少傾向で、どこかで急に減少していません。特に粘着物質の取り締まり強化の報道が出た6月初旬以降に、急に回転数が減少していません。
開幕当初から緩やかに減少傾向なので、二刀流による疲労が主な原因ではないかと思います。
3. 今回は変化球は打たれなかった
対左右成績
左は2021年の平均、右が7月6日の対左右の成績です。
左右どちらも大谷投手にしては三振が少なかったです。
球種成績
上が2021年の平均、下が7月6日の球種別被打率です。
今回打たれたのは全てストレートで、変化球は打たれませんでした。
大谷投手にしては珍しく、フォークで三振を獲っていません。これは大谷投手が意図的に低めのボールゾーンではなく、ストライクゾーンにフォークを投げていたためだと思います。
4 . ストレートのホップ成分は少なかった
上図は「2021年の平均」、「今回(7月6日)」の変化量です。
今回はストレートのホップ成分は少なかったです。
カーブはいつもより横変化が少なく、縦変化が大きかったです。
5. リリースは少し体に近い
上図は「2021年の平均」、「今回(7月6日)」のリリースポイントです。
リリースポイントはいつもより少し体に近かったです。
カーブのリリースはオーバー気味で、少しリリースが早くなっています。その結果、制球が安定して、縦変化が増えたと考えられます。
6. スラッターの制球力が抜群
今回(7月6日)の球種ごとのベース上のボールの位置です。
ストレートは高めと右打者のアウトローに意図的に投げ分けられています。
フォークはいつもと違い、半分以上がストライクゾーン内でした。
スラッターはほぼ右打者のアウトコースに投げられていて、抜け球がありませんでした。多分大谷投手が1番制球に自信を持っていたとおもいます思います。
7. 各球種の軌道が良くなっている
左は4月20日、右は今回(7月6日)の軌道です。
まずカーブを除く、4球種のリリースが近くなっています。
次にストレート、スラッター、フォークの軌道がかなり近くなっています。特にスラッターの軌道がストレートに近くなったのは、凡打を築く上で効果的です。
カーブは横変化が減って制球がしやすく、ベース上の縦変化が大きい軌道になっています。カーブはベース上の縦変化が大きいとゴロになりやすいと言われるので、今の軌道はかなり良いです。
まとめ
①スラッター、カーブが効果的
②平均球速154.1km/h、最高球速158.5km/h
③球速は終盤まで安定
④球速差は最大50km/h
⑤ストレートはホップ成分が少ない
⑥スラッターの制球力が抜群
今回は「大谷翔平投手の2021年7月6日投球分析」を紹介しました。
スラッターは高速化して制球力抜群、カーブはリリースはオーバー気味になって制球が安定して、縦変化が増えました。
ストレート、フォーク、スライダーで圧倒的な投球だけでなく、スラッターとカーブを使うことで投球の幅が拡がってきました。
次回登板は現地時間7月13日(日本時間14日)のオールスターになりそうです。1回限定だと思うので、ギアを上げた投球が見られそうで楽しみです。
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