第169回 【ヤクルト】2022年新外国人A.J.コール投手の投球分析
2021年12月7日、ヤクルトがブルージェイズのアンドリュー・ジョーダン・コール(A.J.コール)投手(29)の獲得を発表しました。
そのため今回は「【ヤクルト】2022年新外国人A.J.コール投手の投球分析」を紹介します。
データはBaseball Savantとfangraphsのデータを使用します。
基本情報
日本では先発予定
所属球団 | ワシントン・ナショナルズ (2015 – 2018) ニューヨーク・ヤンキース (2018) クリーブランド・インディアンス (2019) トロント・ブルージェイズ (2020 – 2021) |
ポジション | リリーフ、先発 |
投打 | 右投右打 |
生年月日 | 1992年1月5日(29歳) |
身長 | 195.6 cm |
体重 | 108 kg |
2018年からリリーフに転向
上はメジャー、下は3Aの年度別の成績です。
2017年までは主に先発でしたが、2018年からリリーフに転向しました。
リリースポイント大きく変化した2020年は24試合で防御率3.09、被打率.226と成績が良化しました。2021年もMLB6試合で防御率1.13、被打率.207、3Aでも10試合で防御率0.00、被打率.211と圧倒的な成績でした。
好成績を残せた要因としては被打率の低下、四死球の減少が大きいです。一方で高かった奪三振率は平均並みに低下しました。
2020~2021年は5球種
上図は年別投球割合で、色が球種を表しています。
持ち球はストレート、カットボール、チェンジアップ、スライダー、カーブの5球種です。2018年まではツーシームも投げていましたが、2020年にリリースポイントが変わったのでもう投げることは無さそうです。
右にはスライダー、左にはチェンジアップとカーブ
上図は右打者、左打者別の投球割合で、色が球種を表しています。
右打者には半分がスライダーで、チェンジアップとカーブはほぼ投げません。
左打者にはチェンジアップとカーブも投げており、5球種をバランス良く投げています。
変化球でもカウントを取れる
上図は右打者、左打者別のカウント別投球割合と成績です。左上が数値の表、右が円グラフ、左下が成績です。
ストレートは決め球よりもカウントを取るために使用しています。ただ、ボールが先行してもストレート一辺倒にはならず、半分以上は変化球を投げています。
チェンジアップはカウントが進んでから、スライダーは決め球、カーブは初球に投げることが多いです。
2020年からフォームが変わって好成績
上図は捕手目線から投手を見たリリースポイントです。□は2015年、〇は2020-2021年です。
2020年からフォームが大きく変わり、リリースが約55cmも頭に近くなりました。
2020~2021年はストレートのリリースが離れている
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均です。
リリースポイントはMLB平均よりもかなり頭に近く、球持ちは平均並みです。またストレートのリリースポイントが他球種から離れています。
フライボーラー
上図は各球種、全体、メジャー平均の被打球種類です。
フライ率31%とMLB平均21%よりも高く、フライボーラーと言えます。
対左打者が得意
左打者の方が被打率1割、被OPS.150くらい低く、左打者を得意としています。
対ピンチ〇
得点圏で被打率、被OPSが大きく低下しているので、対ピンチに強いと言えます。
全球種使える球種
上はOPSのグラフ、下は球種別の成績です。
全球種のOPSがそれなりの成績で、特にスライダーは奪三振も多く奪えています。
ただ、右打者へのストレートとチェンジアップはかなり打たれています。
平均球速150.5km/h、2329回転
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートの平均球速は150.5km/h、2329回転でほぼMLB平均並みです。
チェンジアップはMLB平均よりやや速く、回転数は300回転多いです。
その他の変化球の球速はほぼMLB平均並み、回転数はやや少なめです。
リリーフ転向で球速・回転数UP
水色が平均球速、橙色が回転数の年度別の推移を表しています。
リリーフ登板が増えた2017年に平均球速が約2.5km/h増加。リリーフ転向になった2018年以降は平均球速と回転数が増加しています。
シュートライズ、曲がり球の変化量は少なめ
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートはホップ成分44cm、シュート成分21cmで、MLB平均より約4cmずつ多いシュートライズのボールです。
チェンジアップはMLB平均よりシュート成分が8.5cm多い横への変化が大きいボールです。
カットボール、スライダー、カーブの曲がり球は変化量がMLB平均より少なめです。
スライダーの回転軸が特徴的
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、△はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
スライダーの回転軸がバックスピン側にあります。ここで注意が必要なのは上図は2次元の回転軸を表していることです。実際は3次元なので、バックスピンしている訳では無く、スライダーはジャイロ回転しています。
Baseball SavantのA.J.Coleのページを見ると回転が分かりやすいです。
制球はそこそこ良い
上図は球種別のヒートマップで、色が濃い所が投球数が多いことを表しています。
ストレートは右打者にはアウトハイへの投球が多く、左打者にはアウトローへの投球が多いです。ただ、左打者のアウトハイに抜けるとこが多いです。
カットボールは右打者のアウトロー、左打者のインコースへの投球が多いです。
チェンジアップは左打者のアウトローへの投球が多いですが、抜けてコースを大きく外れることも多いです。
スライダーは右打者のアウトロー、左打者のインローへの投球が多いです。
カーブは左打者の低めにしっかり投げられています。
ストレートと他球種の軌道が遠い
リリースポイントが遠いため、ストレートと他球種との軌道が遠いです。またチェンジアップも他球種とは軌道が大きく異なります。
まとめ
①2018年からリリーフに転向
②2020年にリリースポイント大きく変化して成績良化
③四死球は非常に少なく、奪三振率は平均並
④持ち球は5球種
⑤右には半分スライダー、左はバランス良く5球種
⑥フライボーラー
⑦対左打者、対ピンチ〇
⑧平均球速150.5km/h、2329回転
⑨リリーフ転向で球速・回転数UP
⑩シュートライズ
⑪曲がり球の変化量は少なめ
⑫ストレートと他球種の軌道が遠い
今回は「【ヤクルト】2022年新外国人A.J.コール投手の投球分析」を紹介しました。
2018年からリリーフに転向、2020年にリリースポイントを大きく変更したことで成績が良化して、2021年はMLB6試合で防御率1.13、被打率.207、3Aでも10試合で防御率0.00、被打率.211と圧倒的な成績でした。
持ち球の5球種はバランスが良く、特に縦に沈むスライダーは奪三振も多く奪えていて一番の武器です。
ストレートはシュートライズで、平均球速は150.5km/h、2329回転でほぼMLB平均並みです。
気になるのは「フライボーラーであること」と「ストレートのリリースポイントが他球種から離れていること」ですが、全体的にバランスが良く、日本でも適応して活躍する可能性が高い投手だと思います。
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