第170回 【日本ハム】2022年新外国人ジョン・ガント投手の投球分析
2021年12月9日、日本ハムがツインズのジョン・ガント投手(29)を正式に獲得したと発表しました。1年契約で年俸は2億4000万円プラス出来高払い。
そのため今回は「【日本ハム】2022年新外国人ジョン・ガント投手の投球分析」を紹介します。
データはBaseball Savantとfangraphsのデータを使用します。
- 1. 基本情報
- 2. 持ち球は5球種
- 3. 右打者にもツーシーム、チェンジアップ
- 4. ツーシームはカウントを取る球、初球×
- 5. リリースはかなり体から遠い
- 6. グラウンドボーラー
- 7. 左打者の被打率は低い、出塁率と長打率は高い
- 8. 対ピンチ〇
- 9. 意外と曲がり球の成績が良い
- 10. 平均球速148.1km/h、2442回転
- 11. 先発とリリーフで球速と回転数の差が激しい
- 12. シュート回転のストレート、カットボールみたいなスライダー
- 13. ストレートの回転軸はシュート寄り
- 14. ストレート、ツーシームは真ん中付近
- 15. 右打者の低め、左打者のアウトコースが得意
- 16. ピッチトンネルまでの軌道が近い
- 17. まとめ
基本情報
先発、リリーフを半々
所属球団 | アトランタ・ブレーブス (2016) セントルイス・カージナルス (2017 – 2021) ミネソタ・ツインズ (2021) |
ポジション | 先発、リリーフ |
投打 | 右投右打 |
生年月日 | 1992年8月6日(29歳) |
身長 | 190.5 cm |
体重 | 90.7 kg |
2019年からリリーフ、2021年から先発に転向
上はメジャー、下は3Aの年度別の成績です。
2016~2018年は先発とリリーフを半々でしたが、2019年~2020年は完全にリリーフに転向。2021年は開幕から先発に戻りましたが、6月途中からリリーフに配置換え。8月途中からまた先発に転向しました。
メジャー通算では被打率が低く、奪三振率は平均並み、四死球率は多いです。リリーフ時の方が防御率と被打率と四死球率が低く、奪三振率が高い傾向があります。
持ち球は5球種
上図は年別投球割合で、色が球種を表しています。
持ち球はストレート、ツーシーム、チェンジアップ、スライダー、カーブの5球種です。
近年はストレートよりも投げているツーシームが投球の軸です。そのツーシームと相性の良いのがチェンジアップで、「バルカンチェンジ」と言われる中指と薬指に挟んで投げるスプリットに近いチェンジアップです。
右打者にもツーシーム、チェンジアップ
上図は右打者、左打者別の投球割合で、色が球種を表しています。
MLBではツーシーム、チェンジアップは左打者に投げることが多いですが、ジョン・ガント投手は右打者にもツーシーム、チェンジアップを投げます。ツーシームに関しては右打者の方が多いくらいです。
ストレートとカーブは左打者の方が投球割合が多いです。
右にも投げれるってことは、
ツーシームはカウントを取る球、初球×
上図は右打者、左打者別のカウント別投球割合です。左が数値の表、右が円グラフ。
ツーシームは決め球よりも初球やボール先行の時の方が投球割合が多く、カーブは初球に投げることが多いです。その他のボールはそこまで極端にカウントで割合が変わっていません。
カウント別の成績を見ると、初球の被打率.447とかなり打たれています。これは四死球後の初球の甘いツーシームを狙われることが多いためです。
リリースはかなり体から遠い
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均です。
リリースポイントはMLB平均より約30cm体から遠く、約7cm高いです。球持ちはMLB平均並みです。
グラウンドボーラー
上図は各球種、全体、メジャー平均の被打球種類です。
ゴロ率49%と高いグラウンドボーラーです。球種別では投球割合の高いツーシーム、チェンジアップ、スライダーがゴロ率が高いです。
左打者の被打率は低い、出塁率と長打率は高い
左打者には被打率がやや低いですが、出塁率と長打率はやや高いです。少し左打者の方が苦手としていそうです。
対ピンチ〇
得点圏の被打率.181、被OPS.639とピンチに強いです。
意外と曲がり球の成績が良い
上はOPSのグラフ、下は球種別の成績です。
ストレートが左打者に打たれているくらいで、全球種がまずまずの成績で、特にスライダー、カーブの曲がり球の成績が良いです。
右投手には珍しく、スライダーは左打者の方が被打率、奪三振、OPSが良いです。
平均球速148.1km/h、2442回転
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートは平均球速148.1km/h、2442回転と、MLB平均よりやや遅く回転数が多いボールです。
ツーシーム、スライダーも同様に、MLB平均より回転数が200回転多いです。
チェンジアップは「バルカンチェンジ」で、中指と薬指に挟んで投げるため、球速が遅くて回転数が少ないボールです。
カーブはMLB平均より7km/h遅い、スローカーブタイプです。
先発とリリーフで球速と回転数の差が激しい
上図は年度別の平均球速と回転数です。
リリーフ転向した2019年は平均球速が4.4km/h、回転数が80回転も上昇しています。
シーズン中に先発復帰した2021年は平均球速が3.2km/h、回転数が40回転も下降しています。
2021年は5km/hの差
上の表は2021年の先発とリリーフ時の球速と回転数です。
先発とリリーフで平均球速が5km/hも差があり、回転数も約80回転も違います。
これだけ球速差があるとリリーフで
シュート回転のストレート、カットボールみたいなスライダー
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートはシュート成分30cmとMLB平均より12cmほどシュートするボールです。
ツーシームはシュート成分41cmとさらにシュートして、ホップ成分が多く、横に変化するボールです。
チェンジアップはMLB平均くらいですが、ストレートやツーシームとシュート成分量が近いので、縦に落ちるスプリットのようなボールです。
スライダーはカットボールのように変化量が小さいボールです。
カーブは横変化が少なく、ドロップ成分が多い縦に落ちるカーブです。
ストレートの回転軸はシュート寄り
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、△はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
ストレート、ツーシームは回転軸がシュート寄りです。
チェンジアップはMLB平均くらいの回転軸で回転数が少ないです。
スライダーはジャイロ回転しているため、回転軸の値がブレています。ストレートに近い回転軸の時はカットボールのように変化が少なく、縦変化が少ないです。
カーブはトップスピン寄りで、縦に落ちるカーブです。
ストレートはMLB平
ストレート、ツーシームは真ん中付近
上図は球種別のヒートマップで、色が濃い所が投球数が多いことを表しています。
ストレート、ツーシームは真ん中付近への投球がやや多いです。
チェンジアップは対右打者にはコースを意識せずに低めに投げてそうですが、対左打者には高さよりアウトコースへ投げようとしているみたいです。その結果、対左打者には高めに浮いたボールを長打されています。スプリットに近いバルカンチェンジなので、対右打者のようにコースより低めに投げる意識を持つと対左打者の成績が改善されるかもしれません。
スライダーは対右打者のアウトロー(対左打者のインロー)にしっかり投げられています。
カーブは初球にタイミングを外すために投げることが多いとはいえ、真ん中付近高めのボールはヒットにされているので、低めにしっかり投げることが重要だと思います。
右打者の低め、左打者のアウトコースが得意
上図はコース別成績です。
対右打者には低め、対左打者にはアウトコースの成績が良いです。
左右関係なく、ツーシームとチェンジアップはベースの左下(捕手目線)、スライダーはベースの右下(捕手目線)に投げ込めていると抑えています。しかし、制球をミスって真ん中付近に来ると打たれています。
左右のコースにしっか
ピッチトンネルまでの軌道が近い
ストレート、ツーシーム、チェンジアップ、スライダーのピッチトンネルまでの軌道が近いです。
特にチェンジアップはストレートとツーシームに軌道が近くて真下に落ちるので、空振りが多く奪えそうです。
まとめ
①2019年からリリーフ、2021年から先発に再転向
②被打率が低く、奪三振率は平均並み、四死球率は多い
③リリーフ時の方が成績良い
④持ち球は5球種
⑤ツーシームが主体なグラウンドボーラー
⑥リリースがかなり体から遠い
⑦初球×、対ピンチ〇
⑧平均球速148.1km/h、2442回転
⑨先発とリリーフで平均球速が5km/hの差
⑩シュート回転のストレート
⑪ツーシームは横変化が大きい
⑫チェンジアップは「バルカンチェンジ」
⑬カットボールみたいなスライダー
⑭カーブは縦変化が大きい
⑮右打者の低め、左打者のアウトコースが得意
今回は「【日本ハム】2022年新外国人ジョン・ガント投手の投球分析」を紹介しました。
2016~2018年は先発とリリーフを半々でしたが、2019年~2020年は完全にリリーフに転向。2021年は開幕から先発に戻りましたが、6月途中からリリーフに配置換え。8月途中からまた先発に転向しました。
メジャー通算では被打率が低く、奪三振率は平均並み、四死球率は多いです。
持ち球はストレート、ツーシーム、チェンジアップ、スライダー、カーブの5球種で、リリースがかなり体から遠く、ツーシームが主体なグラウンドボーラーです。
ストレートは平均球速148.1km/h、2442回転で、シュート成分が多いボールです。
リリーフ時の方が平均球速が5km/hも速く、成績も良いので、まずはリリーフで起用すると日本でも活躍しそうです。
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