第183回 【大谷翔平】2021年の打撃分析
2021年11月18日(日本時間19日)、大谷翔平選手が全米野球記者協会(BBWAA)の投票によるア・リーグMVPに満票で初選出されました。その後、11月22日には政府から国民栄誉賞を打診され、辞退したことが報道されました。
今回はそんな「【エンゼルス】大谷翔平選手の打撃分析(2021年)」を紹介します。
使用するデータはBaseball SavantとFanGraphsです。
多くの項目でキャリアハイ
2021年の打撃成績は打率.257(MLB175位)、本塁打46本(MLB3位)、100四死球(MLB5位)、189三振(MLB4位)、OPS.965(MLB10位)、盗塁26個(MLB7位)でした。
2018~2019年に比べると、打率が.257に落ちて三振率が増加(27.3%⇒29.7%)しましたが、それ以外の項目は大きく良化しました。特にリアル二刀流や登板前後も試合に出ることで、打数が増えたのは今後のキャリアにおいて大きな経験になったと思います。
2021年は対左投手を克服
対左投手の成績が「2018-2020年(打率.240、OPS.709)」⇒「2021年(打率.263、OPS.967)」と大幅に成績を良化させました。特に打率と長打率は右投手以上の成績です。
もともと対左投手に苦手意識は無いと本人は言っていたので、打数が増えたことで対左投手の軌道に慣れたのが大きな要因と考えられます。
さらにチャンスに強くなる
得点圏の成績が「2018-2020年(打率.284、OPS.936)」⇒「2021年(打率.284、OPS1.165)」とさらにチャンスに強くなりました。打率はそのままですが、特に長打率が大きく上昇しました。
一方で、得点圏での四死球率も大幅に増加していて、勝負を避けられていたことが分かります。
若いカウントの方が得意
0ストライク(打率.378、本塁打13本)、1ストライク(打率.479、本塁打17本)と若いカウントにかなり強いです。
また2ストライクでの打率は.138とかなり低いですが、本塁打16本も打っており、追い込まれてもフルスイングを貫いていることが分かります。
右のインハイ、左のアウトローが課題
対右投手はインハイが苦手(特にストレートとカットボール)で、成績が良くありません。真ん中と低めは打率は低いですが、本塁打は打っていますので苦手では無さそうです。
対左投手はアウトローが苦手(特にスライダー)で、成績が良くありません。またバックドアのツーシームもあまり打てていません。
このデータは対戦相手も知っていると思うので、2022年は特に対左投手がアウトコースを攻めてくると考えられます。
苦手な球種は無い
全ての球種でMLB平均以上のOPSを記録し、2021年は明らかな苦手球種がありませんでした。
2018~2020年に比べると、スプリット(OPS.412 ⇒ OPS.580)、カットボール(OPS.683 ⇒ OPS1.069)、チェンジアップ(OPS.694 ⇒ OPS.861)、スライダー(OPS.669 ⇒ OPS1.017)が大きく上昇しています。
ただコース別成績でも述べたように、右投手のカットボールについては打率.190(21-4)、OPS.580と少し苦にしています。
140km/h以下も本塁打増加
今年の大谷翔平選手は125~130km/h(打率.375、OPS1.413)、140~145km/h(打率.389、OPS1.288)、145~150km/h(打率.342、OPS1.124)の球速帯をとても得意としていました。
一方、打数が少ないですが125km/h以下の遅球は打率.048(21-1)、OPS.343と成績がイマイチでした。
一般的には140km/h以下の遅いボールは本塁打率が下がる傾向にあり、大谷翔平選手も2020年までは本塁打率2.6%とその傾向が見られました。しかし、2021年は140km/h以下の遅いボールも本塁打率6.5%と上昇し、これが本塁打を量産出来た大きな要因と考えられます。
6-7月はOPS1.000超え
今年の大谷翔平選手はオールスター前までの89試合で打率.279、本塁打33本、OPS1.062と圧倒的な打力を誇りました。特に6月(打率.309、13本塁打、OPS1.312)と7月(打率.282、9本塁打、OPS1.067)とOPS1.000越えで打ちまくりました。
ただ、オールスター後の66試合では打率.229、本塁打13本、OPS.840と一転、成績を落としました。特にオールスター後の7月後半と8月(打率.202、5本塁打、OPS.749)は不調に陥りました。
原因は本人も語っているように「チームの主力が続々離脱して、甘い球が減った」ことが大きいと考えられます。9月、10月は厳しい球を見極められるようになり、四死球が増えて出塁率が4割以上と復調しました。
引っ張りが増えて本塁打量産
2020年までの大谷翔平選手の特徴としては、センター方向の本塁打が多く、逆方向の方が打率が良い打者でした。
2021年は引っ張り率51%と、ライト方向の打球が増えることで本塁打も27本がライト方向でした。ただ、センターに14本、レフトに5本も打っているので、広角に強い打球は飛んでいます。
打球角度が上がって本塁打量産
捉えた打球(安打)の打球速度はMLB中央値よりも11km/h速く、平均打球速度はMLB8位です。
また2018-2020年と比べると、捉えた打球(安打)の打球角度は13度から18度に上がって、本塁打量産の一因になりました。バレル率は脅威の22.3%で、この数字はMLB1位です。
フライ率34%に上昇
2018-2020年はMLB平均以下のフライ率20%でしたが、打球角度が上がったことで2021年はフライ率34%と大きく上昇しました。
MLBのゴロの打率は.241ですが、大谷翔平選手のゴロの打率.273と高いです。この要因としては「打球速度が速いこと」と「内野安打が多いこと」が考えられます。
まとめ
①多くの項目でキャリアハイ
②対左投手を克服
③得点圏打率.284、OPS1.165
④初球○
⑤右のインハイ、左のアウトローが課題
⑥苦手球種が無い
⑦140km/h以下も本塁打増加
⑧6,7月がOPS1.000越え
⑨引っ張りが増え、打球角度が上がって本塁打量産
今回は「【エンゼルス】大谷翔平選手の打撃分析(2021年)」を紹介しました。
2018~2020年に比べると、リアル二刀流や登板前後も試合に出たので打数が大きく増えました。そのため多くの項目でキャリアハイを更新しました。
2021年は「対左投手を克服」「苦手球種が無い」「140km/h以下の遅球にも対応」「引っ張りが増える」「打球角度が上がる」など、様々な点で進化することで本塁打を量産しました。また元々の「0~1ストライクに強い」「チャンスに強い」などの長所もさらに良くなりました。
ただ、対右投手のインハイ(特にストレートとカットボール)、対左投手のアウトロー(特にスライダー)など、まだ課題もあります。2022年はその課題を克服して、さらに成長した姿を見られることを期待したいです。
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