第233回 【大谷翔平】ストレートのホップ量増加(2022年4月27日投球分析)
2022年4月27日、大谷翔平投手(27)が本拠地エンゼルスタジアムでのガーディアンズ戦に「2番・投手兼DH」で投打同時出場。
本人も試合後に「気温(19度)が低く体が動かなかった」と話していたように、初回は抜け球が多くて制球が不安定で、球速も153.6km/hしか出ていませんでした。その初回に1番のストロー選手を四球で出した後、3番のラミレス選手に2ラン本塁打を浴びました。
3回途中までは制球が安定しませんでしたが、「高めのストレート」と「カーブ」を多投することで徐々に調子を上げていきました。
最終的には5回を投げて86球、被安打5、四球1、奪三振4、2失点の投球内容で、2勝目を挙げました。
打っては今季初の猛打賞と打撃でも貢献しました。
今回はそんな「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年4月27日投球分析」を紹介します。
データはBaseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
1. 球種・投球割合
ストレートとカーブを多投
今回はストレート、フォーク、スラッター、スライダー、カーブの5球種でした。
いつもよりストレートを49%と多投して、今回はスプリームを投げませんでした。
※当ブログでは「カットボールをスラッター」と「第二のスプリットをスプリーム」と呼称しています。詳細は過去記事を参照して下さい。
左右ともにスライダーの割合減少
上は前回登板までの2022年平均、下は今回の左右投球割合です。
左右ともにスライダーの割合が減り、ストレートとカーブの割合が多くなっています。
2. コース
高めのストレートを多投
左右ともに高めのストレートを多投しました。特に右打者にはアウトローのスライダーとの相性が良く、高めのストレートで三振を3つも奪いました。
一方、左打者には高めのストレート自体は有効でしたが、変化球も含めて真ん中付近に集まってしまって打たれました。
3. 各成績
やはり左に打たれた
2021年と同様に今回も左打者に9打数4安打とかなり打たれました。やはり真ん中付近に集まっている日は左打者に打たれてしまいます。
ストレートはストライクゾーン内で勝負
今回は変化球を左打者に多く打たれました。
ストレートはストライクゾーン内率71%と非常に高く、ストライクゾーンの中で勝負出来ていました。
フォークは大谷翔平投手にしては珍しく1球も空振りを奪えませんでした。
4. リリースポイント
リリース位置が体から遠い
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。◇は2022年平均、△はMLB平均です。
2022年平均と比較すると、リリース位置は体から遠かったです。
5. 球速と回転数
平均球速155.0km/h、最高159.0km/h
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、◇は2022年平均、△はMLB平均を表しています。
ストレートの平均球速155.0km/h、最高159.0km/h、回転数は2204回転でした。
前回より平均球速と回転数が減少
前回に比べると、平均球速と回転数が減少しています。
初回は球速が遅かった
球速は初回は153.6km/hと出ていませんでしたが、徐々に球速を上げて、3回~5回は全て155km/h以上でした。
6. 回転軸と変化量
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、◇は2022年、点線はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
ストレートがホップする球が増加
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、◇は2022年、△はMLB平均を表しています。
ストレートは前回まではホップ成分が少ない「真っスラ」でしたが、今回は40cm以上の「ホップする球」が増加しました。特に下のツイッターの3回レイエス選手へのストレートはホップ成分50cmと非常にノビがあるボールでした。
フォークとカーブは今回も変化量が安定していました。
スラッターは縦変化量が増加しています。
スライダーは横変化量が減少し、40cm以上が1球しかありませんでした。
まとめ
①ストレート49%、カーブ12%と多投
②高めのストレートを多投
③左打者に9打数4安打
④ストレートはストライクゾーン内率71%
⑤フォークは空振り0
⑥平均球速155.0km/h、最高159.0km/h
⑦前回より平均球速と回転数が減少
⑧初回は153.6km/hと遅かった
⑨ストレートはホップ量増加(42球中23球が40cm以上)
⑩フォークとカーブの変化量安定
⑪スライダーは横変化量減少(40cm以上が1球のみ)
今回は「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年4月27日投球分析」を紹介しました。
本人も試合後に「気温(19度)が低く体が動かなかった」と話していたように、初回は抜け球が多くて制球が不安定で、球速も153.6km/hしか出ていませんでした。その初回に1番のストロー選手を四球で出した後、3番のラミレス選手に2ラン本塁打を浴びました。
フォークは変化量は安定していましたが、制球が不安定で空振りが0でした。またスライダーも横変化量が減少していました(40cm以上が1球のみ)。そのため3回途中までは苦しい投球が続きましたが、「高めのストレート」と「カーブ」を多投することで徐々に調子を上げていきました。
ストレートは前回まではホップ成分が少ない「真っスラ」でしたが、今回は40cm以上の「ホップする球」が増加しました。特に3回レイエス選手へのストレートはホップ成分50cmと非常にノビがあるボールでした。
制球が不安定で球速も出ず、フォークとスライダーも不調という状態にもかかわらず、ストレートの球質を改善することに成功して勝利出来たのは今後に繋がると思います。
前回のようなフォークとスライダーが投げられて、今日のようなホップ量が多いストレートを投げられれば、今後完全試合をする可能性も感じられる投球でした。
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