第366回 【DeNA】2023年新外国人トレバー・バウアー投手の投球分析
2023年3月14日、横浜DeNAが前ドジャースのトレバー・バウアー(Trevor Bauer)投手(32)と合意した正式に発表しました。単年契約の出来高含めて300万ドル(約4億円)で背番号は96。
MLBのDV違反により出場停止処分を受け、今年1月にドジャースから放出されました。そのため今年の大半の年俸はドジャースが負担するのでこの金額で獲得出来ました。
バウアー投手は2020年にサイ・ヤング賞を獲得したMLBトップレベルの投手で、MLBの中でも先駆者的にデータの解析や応用をする選手です。そのため先発投手だけでなく、野球の知識やノウハウをチームに伝授することも期待されます。
投手の特徴としては、フォームがショートアームで体に近くリリースが見にくいです。また各球種の軌道も似せるため球種が見分けにくいです。そして最大の特徴は回転数が多いことです。
2021年のストレートの2784回転はMLB1位の回転数を誇ります。
今回はそんな「【DeNA】2023年新外国人トレバー・バウアー投手の投球分析」を紹介します。
Baseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
1. 基本情報・年度別成績
2020年にサイ・ヤング賞
所属球団 | アリゾナ・ダイヤモンドバックス (2012) クリーブランド・インディアンス (2013 – 2019) シンシナティ・レッズ (2019 – 2020) ロサンゼルス・ドジャース (2021) |
ポジション | 先発 |
投打 | 右投右打 |
生年月日 | 1991年1月17日(32歳) |
身長 | 185.4 cm |
体重 | 93 kg |
近年の成績はMLBトップレベル
MLB通算で222試合に登板して防御率3.79、被打率.231、奪三振率9.8、与四死球率3.9です。
直近の2021年は17試合に登板して防御率2.59、被打率.182、奪三振率11.5、与四死球率3.3でした。
2021年のフライ率が35%(MLB平均23%)とかなりのフライボーラーです。2019年からフライ率が増えたのはストレートのホップ成分が増えたためと考えられます。
投手としての特徴は「フライが多い」「被本塁打少ない」「奪三振多い」「与四死球少ない」「右打者が得意」「対ピンチに非常に強い」「キレがある(回転数が多い)」「球種間のリリース差が小さい」などがあげられます。
2. 球種・投球割合
6球種
持ち球はストレート、ツーシーム、カットボール、チェンジアップ、スライダー、ナックルカーブの6球種です。
右にスライダー、左にナックルカーブを多投
上図は左右別投球割合で、色が球種を表しています。
右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップとナックルカーブの比率が高いです。
右にスライダー、左にナックルカーブが決め球
右にスライダー、左にナックルカーブを決め球で多く使用しています。
3. コース
右のアウトローにスライダー
上が全球、真ん中が安打、下が空振りのベース上の位置です。
右打者のインローとアウトハイの球が少ないです。
ストレートは高め、
ツーシームは右打者のインハイ、
カットボールは左打者のインコース、
チェンジアップは左打者のアウトロー、
スライダーは右打者のアウトロー、
ナックルカーブは左打者のインローへの投球が多くて空振りも奪っています。
右打者のアウトコース〇
右打者はアウトコース、左打者はインコースの成績が良いです。
4. 対左右成績
対右打者が得意
右打者の被打率.146、被OPS.504と右打者が得意です。
左打者も被打率.220と苦手なわけでは無さそうです。
5. 得点圏成績
対ピンチにかなり強い
得点圏の被打率.101、被OPS.344と対ピンチにはかなり強いです。また得点圏での奪三振率は46%に上がります。
その要因としては得点圏ではギアを上げて球速が2.5km/hも上昇するためです。
6. 球種別成績
スライダーの空振り率18%
左はOPSのグラフ、右は空振りなどのグラフ、下は球種別の成績です。
ストレートは被OPS的に右打者への成績が良いです。
ツーシームは右打者の被OPS.221で、ストライク率78%とカウント球としてかなり優秀です。
カットボールは左右両方に1番打たれている球ですが、ストライク率は良いです。
チェンジアップは空振率21%と高く、左打者の被OPS.575と成績が良いです。
スライダーは空振率18%と高く、右打者への成績が良いです。
ナックルカーブは左打者に被OPS.901と打たれましたが、右打者には被OPS.000でした。
全体でストライク率63%(MLB平均64.2%) 、ゾーン内率49%(MLB平均48.5%)と、意外とストライク率はそこまで高くありません。
7. リリースポイント
球種間のリリース差が小さい
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。△はMLB平均のリリースポイントです。
MLB平均よりリリースは約15cm体に近く低いです。
エクステンションは少し球持ちが良いです。
ショートアームで球種間のリリース位置の差が小さいので、打者は見極めにくいと考えられます。
8. 球速と回転数
平均球速151.1km/h、最高156.9km/h
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、△はMLB平均を表しています。
ストレートは平均球速は151.1km/hとMLB平均くらいですが、NPBの先発としては速い方です。回転数は2784回転とMLB1位の回転数です。
ツーシームは2554回転(MLB5位)、カットボールは2871回転(MLB1位)、スライダーは2962回転(MLB5位)、ナックルカーブは3013回転(MLB12位)と変化球はどれもMLBトップレベルの回転数です。
2020年に一気に回転数が上昇
平均球速は151km/h前後で安定していますが、回転数は年々上昇傾向です。特に2020年に2778回転と一気に回転数が上昇しています。ここまでの急上昇は粘着物質などの可能性が考えられます。
2023年4月16日の二軍戦(横須賀)での156km/hの球が2594回転だったことを考えると2500~2600回転くらいの球は投げそうです。
9. 変化量
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、点線はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
ストレートはホップ量大
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、△はMLB平均を表しています。
ストレートはホップ成分51cmとかなりMLB先発1位のホップ量です。
ツーシームはホップ成分が多く横に曲がるシュートタイプです。
カットボールは球速が遅く変化量が大きいスラッタータイプです。
チェンジアップはシュート成分が多いです。
スライダーは横変化量がMLB12位と変化量が大きいスラーブのようなボールです。
ナックルカーブはMLB1位のドロップ成分で縦に大きく落ちるボールです。
まとめ
【基本情報】
①2020年にサイ・ヤング賞
②2021年は17試合で
防御率2.59
被打率.182
奪三振率11.5
与四死球率3.3
③フライボーラー(フライ率35%)
④被本塁打少ない
⑤奪三振率が高い
⑥与四死球が少ない
【球種割合】
①6球種
②右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップとナックルカーブの比率が高い
③6球種とも決め球に使用
⇒ただ右にスライダー、左にナックルカーブの比率高い
④左打者にボール先行すると72%ストレート
【コース】
①次のコースの投球と空振り多い
ストレートは高め
ツーシームは右打者のインハイ
カットボールは左打者のインコース
チェンジアップは左打者のアウトロー
スライダーは右打者のアウトロー
ナックルカーブは左打者のインロー
②右打者はアウトコース、左打者はインコースの成績が良い
【対左右・得点圏成績】
①右打者◎
被打率.146
奪三振率36%
被OPS.506
②対ピンチ◎
被打率.101
奪三振率46%
被OPS.344
③得点圏の本塁打0
【球種別成績】
①ストレートは右打者○(被打率.156)
②ツーシームは右打者◎(被打率.091)
③カットボールは1番成績✕(被OPS.911)
④チェンジアップは左打者○(被打率.176)
⑤スライダーは右打者◎(被打率.118)
⑥ナックルカーブは右打者◎(被打率.000)
【リリース】
①ショートアーム
②リリースは約15cm体に近く低い
③少し球持ちが良い
④球種間のリリース差小さい
【球速・回転数】
①平均球速151.1km/h、最高156.9km/h
②回転数はMLBトップレベル
ストレートは2784回転(MLB1位)
ツーシームは2554回転(MLB5位)
カットボールは2871回転(MLB1位)
スライダーは2962回転(MLB5位)
ナックルカーブは3013回転(MLB12位)
③2020年に一気に回転数が上昇
④横須賀での156km/hの球が2594回転
【変化量】
①ストレートのホップ量51cm(MLB先発1位)
②ツーシームはシュートタイプ
③カットボールはスラッタータイプ
④チェンジアップはシュート成分大
⑤スライダーは変化量大(MLB12位)
⑥ナックルカーブはドロップ量49cm(MLB1位)
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