第230回 【大谷翔平】6回1安打12奪三振のスライダー無双(2022年4月20日投球分析)
2022年4月20日、大谷翔平投手(27)が敵地ミニッツメイドパークでのアストロズ戦に「1番・投手兼DH」で投打同時出場。
初回から「変化球の精度」や「クイックなどの投球術」が抜群で、特にスライダーがカウント球でも決め球でも使えて無双状態。とにかく変化球がバットに当たらず、6回1死までは完全投球で今季初勝利。
最終的には6回を投げて81球、被安打1、四球1、キャリアハイの奪三振12、0失点の投球内容でした。
今回はそんな「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年4月20日投球分析」を紹介します。
データはBaseball SavantとFanGraphsのデータを使用します。
1. 球種・投球割合
スライダーを多投、スプリームとスラッターは封印
今回はストレート、フォーク、スライダー、カーブの4球種でした。
いつもよりスライダーを43%も多投して、今回はスプリーム、スラッターを投げませんでした。
※当ブログでは「カットボールをスラッター」と「第二のスプリットをスプリーム」と呼称しています。詳細は過去記事を参照して下さい。
右にスライダーを62%
上は前回登板までの2022年平均、下は今回の左右投球割合です。
左右ともにストレートが減り、フォークとスライダーが多かったです。
特に右打者にはスライダーを62%も投球しました。
2. コース
ほとんどボール球を振らしていた
フォークは抜ける球がありましたが、左右ともに変化球がほとんど低めに集まっています。
右打者にはスライダーが見逃しはゾーン内、空振りはアウトローに外れたボール球で奪っています。
左打者にも変化球でアウトコース、低めのボール球で空振りを奪っています。
「左打者に真ん中付近が多い」というのが課題でしたが、かなり減って際どいコースが増えました。
3. 各成績
左を抑えた
今まで課題だった対左打者ですが、11打数1安打7奪三振と完全に抑えました。
前に飛んだ変化球は3球のみ
前に飛んだ変化球は3球のみと、とにかく変化球がバットに当たりませんでした。
変化球はゾーン率は全部50%以下なので、ボール球を上手く振らせていたことが分かります。
特にスライダーは35球中、空振り11球、見逃し12球と、バットに当たらない無双状態でした。
4. リリースポイント
リリース位置が約7cmほど高く、体から遠い
左図は捕手目線、右図は三塁側から投手を見たリリースポイントです。◇は2022年平均、△はMLB平均です。
前回登板までと比較すると、リリース位置が約7cmほど高く、体から遠いです。
これはフォームを修正したことによって、腕の振りが良くなったためだと考えられます。
下の動画のように、まず大きな修正点としてはセットのグラブの位置が胸から腰に変わっています。その効果なのかは分かりませんが、全体的に動きのリズムが良く、特に足を着いてからの腕の出方がスムーズです。
5. 球速と回転数
平均球速156.3km/h、最高158.5km/h
上図は球種別の平均球速と回転数のグラフで、◇は2022年平均、△はMLB平均を表しています。
ストレートの平均球速156.3km/h、最高158.5km/h、回転数は2282回転でした。
スライダー、カーブの回転数が約100回転増加しています。これはフォーム修整により影響と考えられます。
前回より回転数はさらに上昇
2021年と比べても、今回の平均球速156.3km/hは速かったです。
また前回までよりも今回は回転数が50回転増加しました。
6. 回転軸と変化量
回転軸
上図は捕手側から見た球種別の回転軸の向きで、◇は2022年、点線はMLB平均を表しています。数値は回転数で、中心から離れるほど回転数が多くなります。
ストレートがホップする球が増加
上図は捕手側から見た球種別の変化量で、◇は2022年、△はMLB平均を表しています。
ストレートは前回まで同様の「真っスラ」とMLB平均くらい「ホップする球」の2パターンで、今回はこの「ホップする球」が増加しました。
フォークは前回変化量が不安定でしたが、今回は変化量が安定。
スライダーは横変化量が増加し、40cm以上が24球もあり、最大57cmの驚異的な変化量でした。
カーブも横変化量が増加しました。
スライダーは特殊な変化量
上は4月18日時点のメジャー右投手のスライダー変化量です。
大谷翔平投手のスライダーは横変化量がメジャートップクラスと言えます。
横変化量が40cm以上の全投手が縦変化量4cm以下ですが、大谷翔平投手は縦変化量10cm以上と特殊です。
つまり横変化量が大きい投手は斜めに曲がっているのに対し、大谷翔平投手は真横に大きく滑る変化をしています。
まとめ
①スライダーを43%も多投
②スプリームとスラッターは封印
③変化球でボール球を振らしていた
④課題の左に11打数7奪三振
⑤前に飛んだ変化球は3球のみ
⑥スライダーは空振り11、見逃し12
⑦リリース位置が約7cmほど高く、体から遠い
⑧平均球速156.3km/h、最高158.5km/h
⑨ストレートはホップする球増加
⑩フォークの変化量安定
⑪スライダー、カーブは横変化量と回転数増加
そのため今回は「【投手兼DH】大谷翔平投手の2022年4月20日投球分析」を紹介しました。
初回から「変化球の精度」や「クイックなどの投球術」が抜群で、特にスライダーがカウント球でも決め球でも使えて無双状態。とにかく変化球がバットに当たらず、6回1死までは完全投球で今季初勝利。
セットのグラブの位置が胸から腰に変わり、リリース位置が約7cmほど高く、体から遠くなったのが、好影響をもたらしたと考えられます。
これにより「変化球の制球力」「回転数の増加」に繋がり、変化球でボール球を振らせることが出来て、前に飛んだ変化球は3球のみという驚異的な投球になりました。
また課題の対左打者への制球も安定し、11打数7奪三振と抑えました。
ストレートは平均球速156.3km/h、最高158.5km/h、回転数は2282回転で、今回は「ホップする球」が増加しました。
フォークは前回変化量が不安定でしたが、今回は変化量が安定。
スライダーは横変化量が増加し、40cm以上が24球もあり、最大57cmの驚異的な変化量でした。
カーブも横変化量が増加しました。
前回の登板で課題に挙げた「対左の制球」「フォークの変化量の不安定さ」を1週間で修整してきたのは凄いです。
今日の変化球はほぼ完璧に近かったので、次回登板でも継続出来るのか楽しみです。
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